こども政策の推進にあたり、こども家庭庁は5月10日、全国知事会、全国市長会、全国町村会と意見交換を行う「こども政策に関する国と地方の協議の場」を開催した。国と地方の協議の場は同庁設立後、初めての開催で、今後は年2回程度の定期開催に加え、実務者レベルでの協議を設定していくことで合意。地方側からは、地域間格差が生じないような制度設計や財源措置を求める意見が出た。
初会合では、岸田文雄首相の掲げる異次元の少子化対策のたたき台として、小倉将信こども政策担当相が3月末に取りまとめた「こども・子育て政策の強化について(試案)」をはじめ、こども政策のDX(デジタル・トランスフォーメーション)をテーマにディスカッションが行われた。
冒頭で小倉担当相は「こども政策の推進にあたっては、現場において実際の取り組みを担っている地方自治体の皆さんとの連携が必要不可欠であり、国と地方が車の両輪となって取り組む必要があることは論を待たない」と呼び掛け、「オンラインも活用しつつ、今回のようなトップレベルの協議の場はもとより、実務の担当者による協議の場など、多様な、多層な協議の場を設けて国と地方の連携をさらに深めていきたい」と提案した。
これに対して全国知事会会長の平井伸治鳥取県知事は「これからの子育ての方向性に基本的に賛同させていただきたいと思うし、これから具体的にそれを実現させていくためには、現場とよく擦り合わせをしていただきたい」と応じ、「(試案では)例えば、保育士の加配について示していただいた。これは現実に市町村でも話し合いをしているが、どうやって人材を確保したらいいのか、今後どうやって進めていけばいいのか、実務は簡単にいかない。サービスを提供していく意味で、そうした実務レベルの擦り合わせを含めて、3団体との協議を今後も親しくやっていただけるとありがたい」と要望した。
オンラインで参加した全国市長会会長の立谷秀清福島県相馬市長は「少子化対策はわれわれ自治体の存亡に関わるような最重要課題であるので、都市自治体としてもしっかり役割を果たしていきたい。子育ての各種政策の実現のためには基礎自治体を通して実施するものが多いわけで、地域間格差が生じることのないように、つまり、こどもの引っ張り合いをするようなことがないように、どの自治体も積極的に取り組めるようにすることが大変重要だと考えている。安定的な地方財源の確保をこの際しっかりやっていただきたい。また、子育て世帯を対象とする保育等のサービスの拡充については、それぞれの地域の実情も十分に踏まえていただいて、現場を抱える基礎自治体の意見を尊重していただきたい」と、地方自治体の実情を踏まえた施策と安定的な財源の確保を求めた。
会合後、記者団の取材に応じた平井知事は「地域間格差が生じないようにするためには、やはり国として責任のある財源措置が必要だ」と改めて強調。「例えば保育料の無償化や医療費の無償化、学校給食の課題など、今議論が始まっているが、そうした大きな課題はやはり、国として統一的な制度が望ましい。そのための財源措置が必要だ。これは各団体共通の思いだった」と、地方として地域間格差が生じないような財源や制度設計が必要との認識を示した。