教員環境の抜本改善「毎年度5000億円の国費必要」 萩生田氏

教員環境の抜本改善「毎年度5000億円の国費必要」 萩生田氏
特命委の冒頭にあいさつする萩生田政調会長
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 教員の働き方改革や処遇改善を巡り、自民党の「令和の教育人材確保に関する特命委員会」は5月10日、長時間勤務は「将来的には月20時間程度」、給特法の教職調整額は「少なくとも10%以上」といった踏み込んだ内容の提言を行った。会合後、特命委の委員長として議論をリードした萩生田光一政調会長は記者団に対し、「わが国の未来を拓く子供たちを育てるという崇高な使命を有する、かけがえのない職業である教師に志ある優れた人材を得ることが不可欠。教育への投資を既成の概念にとらわれず、大胆に拡充し、教師を取り巻く環境を抜本的に改善することが必要だ」と強調。改革に必要な国費投入額について「毎年度約5000億円規模の拡充が必要になる」として、恒久財源を確保するよう政府に強く求めた。萩生田氏の主な発言と記者団とのやりとりは次の通り。

冒頭発言

 教育は国家の根幹であり、国家100年の大計です。人への投資、その中でも子供たちの教育への投資は一丁目一番地であり、世界に冠たる質の高い公教育を作っていくことが最大の少子化対策でもあります。こども予算倍増も議論されていますが、少子化対策を進めるにあたって、質の高い公教育の創生は不可欠の要素です。

 そのためには、わが国の未来を拓く子供たちを育てるという崇高な使命を有する、かけがえのない職業である教師に志ある優れた人材を得ることが不可欠です。教育の成果を左右するのは、教師の皆さんです。教育への投資を既成の概念にとらわれず、大胆に拡充し、教師を取り巻く環境を抜本的に改善することが必要だと考えます。

 具体的には、教師は高度な専門性と裁量性を有する専門職であることを踏まえ、(給特法が定める)教職調整額を少なくとも10%以上に増額し、メリハリある給与とするなど、教師の処遇改善はもとより、▽将来的には平均の時間外在校等時間が月20時間程度となることを目指した、働き方改革のさらなる加速化▽中学校の35人学級の実現や教員業務支援員の全小中学校への配置など、教師の支援スタッフといったマンパワーの抜本的な拡充▽優れた人材が教師を目指すための支援--を、一体的にパッケージとして改革する必要があります。

 教師を取り巻く環境の抜本的な改善により、教育の質を高めることは、今後の日本の未来を決める最重要課題です。だからこそ、文科大臣在任時には、働き方改革を進めるための給特法改正、小学校35人学級を実現しました。

 教育人材確保のための一体改革に必要な予算をつけて計画的に推進し、不退転の決意で、この改革を何としてもやりきることが大切だと考えています。このため、まずは、今回提言する内容を、6月の骨太の方針にしっかりと書き込んでいくことを政府に求めてまいりたいと思います。

質疑応答

--全体でどのくらいの予算が必要になるのか。

 萩生田氏 本提言の改革に必要な予算については、どの程度の規模で充実させるかにもよりますが、しっかりとした改革を行うには、私としては毎年度の国費投入額について約5000億円規模の拡充が必要になるのではないかと考えております。児童生徒の減少に伴って生じる財源の活用も含め、恒久財源の確保による予算の裏付けにより、本プランの内容を着実に確実に実現することを政府に強く求めてまいりたいと思います。

--地方負担分が発生するのか。

 萩生田氏 国費ベースで5000億ということになりますと、今の教育予算は(国が)3分の1ですから、地方の皆さんにも当然ご負担をいただくことになりますが、それは地財措置も含めてということになります。

--教職調整額を一律で増額すると、勤務時間に応じた残業手当の支給ではないため、教員の時間外勤務を削減するインセンティブが働かなくなるとの懸念を指摘する声が専門家から出ているが、この点はどう考えるのか

 萩生田氏 教員の給与体系について、給特法そのものを廃止して、一般の地方公務員と同じような残業手当にするべきではないかという意見も当初あったことは事実です。しかしながら、教員の仕事というのは時間で計りきれない複雑なさまざまな内容がありますので、それよりは、現在の人材確保法、そして給特法によって裏付けされている調整額を10%以上に、ということを提案させていただきました。その根拠は、時間外を月20時間程度に抑えるという働き方改革とセットで考えた数字です。

 つい数年前まで、学校では、いわゆる仕事の時間、職場への登下校の時間管理もできていなかった時代がずっと長く続いたわけですけれど、ここ数年、そういった管理がきちんとできるようになりました。この10%の調整額があることで、早く帰れる人は帰ればいいわけですし、あるいは1年を通して帰れない月も中には出てくるとは思いますけれども、一つの大きな目安としては、逆にインセンティブになるのではないかと期待しております。

--教員の処遇改善については、国民的な支持や納税者の理解が必要だと考えるが、社会全体の合意を作っていくために、どのようなことを考えているか。

 萩生田氏 まず、教員の給与体系について、記者の皆さんも多分、文科省の担当ではない方はほとんどご存知ないと思います。(教員の)残業には手当がないという、特殊な職業であることを、この機会に国民にもしっかり知っていただく必要があると思います。

 その上で、4%という調整額が上乗せされているとは言いながら、(教員の)勤務実態ではいわゆる時間外勤務が45時間を超える状況がずっと続いていて、昨今、少しずつ改善されたとはいえ、一般の地方公務員と比較すると、財政的には非常に劣化している内容だということは、この機会に国民の皆さんに知っていただきたい。

 ただ、誤解がないようにお願いしたいのは、教員はお金を高くすればいい仕事をするとか、お金を高くすることで(教員の)志望者が増えるとか、われわれは単純に考えているわけではありません。

 (教員は)子供たち一人一人に向き合い、その教員との出会いは子供たちの人生観を変えるぐらい大切な職業です。その大切な職業に見合うだけの給料を、この機会にしっかり一度見直そうというのが今回の改革案です。このことを、教育関係者だとか、学校関係者だとか、そういう小さなそのコミュニティーの中で議論するのではなく、まさに国民を代表する国政の場できちんと知っていただいた上で、その制度の改正をしていくことが極めて大事かなと思っています。

 --教職調整額はなぜ10%なのか、理由をもう少し説明してほしい。

 萩生田氏 職場環境等を総合的に考えて、正規の勤務時間から上回ったとしても、その上限は20時間が目安ではないかと考えました。それを逆算して、(教職調整額の)10%という数字が出てきました。なぜかというと、(半世紀前に)4%を決めたとき、その時代の時間外勤務時間の8時間という数字を根拠にしたので、そこに倣って(8時間の2.5倍の20時間ならば)10%という数字を逆算したところです。

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