こども家庭審議会は5月16日、幼児期までのこどもの育ち部会の初会合を開き、「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針(仮称)」の策定作業に着手した。こども家庭庁設立準備室の有識者懇談会が昨年末に取りまとめた論点整理を踏まえ、年内をめどに指針を取りまとめる。指針は妊娠期から乳幼児期、さらには小学校との接続までも見据え、こどもが生涯にわたるウェルビーイングの基礎を培えるようにするための具体的な施策を整理。子育て当事者や幼児教育・保育関係者など、直接こどもに関わる人だけではなく、地域などの全ての人が当事者としてこどもの育ちを保障していく社会づくりを目指す。
就学前のこどもの育ちに関する方針は、これまで幼稚園教育要領や保育所保育指針など、幼児教育・保育施設ごとに定められてきたが、こども家庭庁の設置によって新たに、それらに通っていない「未就園」のこどもも含め、妊娠期から幼児期まで一貫した指針を策定することが閣議決定された。これを受けて同庁発足を前に昨年度、こども家庭庁設立準備室は、この「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針(仮称)」の策定に向けた有識者懇談会を立ち上げ、3月に指針の目的や方向性をまとめた論点整理を報告。4月に開かれたこども家庭審議会の初会合では、改めて岸田文雄首相から「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針(仮称)」の策定に向けた検討が諮問され、新たに設置された「幼児期までのこどもの育ち部会」で議論することとなった。
有識者懇談会の報告では、妊娠期から幼児期までを、こどもの生涯にわたるウェルビーイングの基礎を培い、人生の確かなスタートを切るための最も重要な時期であると位置付け、誕生前から幼児期まで、心身の健やかな育ちを切れ目なく保障し、その育ちを支える環境を構築すること、それによって、こどもたちが将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会を実現することを指針の目的に掲げた。その上で、こどもを中心に保護者・養育者、こどもに直接関わる立場の人だけでなく、地域社会や社会全体で、その考え方を共有する「こどもまんなかチャート」を提示し、具体的な事項をさらに検討するよう求めていた。
「幼児期までのこどもの育ち部会」では、関係団体へのヒアリングなどを行い、9月ごろまでに中間取りまとめを行う。年内には指針に関する最終取りまとめを示し、それを基にこども家庭審議会が答申。最終的な指針として閣議決定される見通し。
初会合では議論に先立ち、小倉将信こども政策担当相が「こどもの幼児期までは人生の確かなスタートを切るための最も重要な時期だ。そのため、幼児期までの育ちそのものの質に着目したこの部会は、こどもの一生のウェルビーイングや社会全体の未来に関わる重要な位置付けでもある」と、同部会のミッションを説明。審議にあたっては▽こどもの育ちそのものの質に着目すること▽エビデンスに基づいたこどもの育ちを保障していくこと▽真に当事者や社会に浸透するための方策についての視点――の3点に留意した検討を求めた。
続く各委員からの議論では「3歳からはこども集団の育ち合いや環境をしっかり位置付けて、架け橋につながる幼児期の在り方を述べていくことが大事だ。保育士や幼稚園教諭らが、養成校から現場に行った後、アップデートしていくことを保障していく仕組みを指針の考え方の中に盛り込んでいただきたい」(加藤篤彦武蔵野東第一・第二幼稚園園長・公益社団法人全国幼児教育研究協会理事)や「議論の進行上、どうしても就学前や幼児期などと区切らざるを得ないというのが有識者懇談会の課題だったと思う。やはり小学校などの義務教育期との連動・接続に違和感のないように進める必要性を感じる」(水野達朗大阪府大東市教育委員会教育長)など、幼小連携を意識したシームレスな議論を求める意見が複数の委員から出た。障害のあるこどもが地域社会の中で、他のこどもたちと共に学ぶインクルーシブ教育の強調や、高校生、大学生がこどもと関わる場に参画することの推進を提案する声などもあった。
初会合にあたり、同部会の座長には、こども家庭審議会会長でもある秋田喜代美学習院大学文学部教授・東京大学名誉教授が選出されたほか、ベビーシッターなどの安全性や質などに関する対策課題を検討する「こどもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会」の設置なども決まった。