こども家庭審議会は5月17日、こどもの居場所部会の初会合をオンラインで開催し、「こどもの居場所づくりに関する指針(仮称)」の策定に向けて具体的な事項の検討に入った。こども家庭庁設立準備室の有識者検討委員会が3月に取りまとめた報告書などを踏まえ、今後、関係団体や子どもへのヒアリングなどを進め、年内をめどに指針を取りまとめる予定。指針は、全ての子どもが安全で安心して過ごし、さまざまな学びや体験の機会に触れ、幸せな状態(Well-being)でいることができる居場所づくりを目指すとしている。
「こどもの居場所づくりに関する指針(仮称)」が閣議決定されたことを受け、昨年度、こども家庭庁設立準備室は「こどもの居場所づくりに関する検討委員会」を立ち上げ、3月には▽こども・若者の声を聴き、適切に居場所づくりに反映させる仕組みの整備▽居場所における支援の質向上と環境整備▽地域の居場所をコーディネートする人材確保や育成への支援━━などの必要性を求める報告書をまとめた。
4月に開かれたこども家庭審議会の初会合では、岸田文雄首相から「こどもの居場所づくりに関する指針(仮称)」の策定に向けた検討が諮問され、新たに設置された「こどもの居場所部会」で議論することとなった。今後は関係団体へのヒアリングなどを行い、8月ごろまでに指針の論点提示を行う。年内には指針に関する最終取りまとめを示し、それを基にこども家庭審議会が答申し、閣議決定される見通し。
この日の初会合では、今後の同部会での議論内容について、委員からさまざまな意見が出された。大竹智委員(立正大学社会福祉学部教授)は「すでにある社会資源の児童館が、こどもの居場所づくりにおいて非常に大きな役割を担っていくのではないか」と考えを述べた。安部芳絵委員(工学院大学教育推進機構教授)は「災害など緊急時にこどもの居場所は後回しにされがちだ。災害の多い国ということもあり、緊急時のこどもの居場所についても考えていきたい」と話した。
今村久美委員(認定特定NPO法人カタリバ代表理事)は「今後、部活動の地域移行も進んでいく。子どもたちの放課後は自分で選べるようになるからこそ、どんな地域においても多様な居場所をつくる必要がある。そうでなければ、居場所がSNSにしかないということにもなりかねない。どうすれば、どこの地域にも多様で安心できるこどもの居場所を整備していくことができるか、議論していきたい」と力を込めた。
また、宇地原栄斗委員(NPO法人Learning for All 子ども支援事業部エリアマネージャー)は「居場所を誰が担うのかというのは、外せない議論だ。担う人がいなくて居場所がつぶれていってしまうのでは意味がない。持続可能な居場所づくりを目指して議論していきたい」と述べ、大空幸星委員(NPO法人あなたのいばしょ理事長)は「そもそもこどもの居場所づくりがなぜ必要なのか、グランドデザインが必要ではないか。理想論だけでなく、現実的な解を見つけなければいけない。その上で、SNSなど新たなアプローチについても議論していきたい」と提案した。
会の最後に小倉将信こども政策担当相は「居場所は子どものウェルビーイングや社会全体の未来に深く関わることだと考えている。この部会で議論する指針に基づき、こどもの居場所づくりの取り組みを強力に推進していく」と述べ、今後の審議にあたっては、こども・若者の視点に立った議論と、全ての子どもの健やかな成長やウェルビーイングの向上を目指す視点での議論を求めた。
同部会の部会長には、前田正子委員(甲南大学マネジメント創造学部教授)が選出された。