社会にイノベーションをもたらす人材育成が求められるとして、東京商工会議所はこのほど、産業界・地域、学校が連携してアントレプレナーシップ教育(起業家教育)に取り組む環境づくりに向けた意見書を発表した。日本ではアントレプレナーシップ教育は大学を中心に行われているとし、小、中、高校を対象に発達段階に応じたプログラムが必要だと指摘。学習指導要領でもアントレプレナーシップ教育を明確に位置付け、各教科と連携したカリキュラムや教育コンテンツを国が提供すべきだとした。
意見書では、社会環境が急速に変化する現代において、イノベーションを起こす人材を生み出していくことが急務だと強調。そうした人材を育成するためのアントレプレナーシップ教育は、必ずしも「起業家」を育てることを目的とするものではなく、情報収集・分析力、判断力、実行力、リーダーシップ、コミュニケーションといった能力やチャレンジ精神、創造性、探究心などの「心のありよう」を総合的に育む機会が望まれているとした。
その上で、日本のアントレプレナーシップの国際的評価は、初等中等教育が低く、高等教育との評価の差も大きく開いているとし、アントレプレナーシップを強化するためには、高校生以上を主な対象とした従来の活動にとどまらず、初等・中等教育段階から時間をかけて取り組んでいくべきだと提言した。
一方で、アントレプレナーシップ教育を学校現場で展開していくには、教員が無理なく取り組めるようにする環境整備が必要だとし、小、中学校の学習指導要領での位置付けを明確にし、既存の教科とひも付けた学習プログラムを国が提示することや、その後の子どもたちの進路にどのような影響をもたらしたかなど、こうしたアントレプレナーシップ教育の効果について、短期的、中長期的な検証をすべきだとした。
また、アントレプレナーシップ教育の普及・定着は学校と地域、企業の連携が不可欠であるとし、コーディネート機能を担う組織整備や人材育成も重要だとした。