コロナで中止、夏の甲子園大会を取り戻す 元高校球児の大学生が企画

コロナで中止、夏の甲子園大会を取り戻す 元高校球児の大学生が企画
記者発表会で思いを語る大武さん(左)と古田さん
【協賛企画】
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 コロナで中止になった3年前のあの夏の甲子園大会を取り戻したい━━。武蔵野大学アントレプレナーシップ学部3年生の大武優斗さんが発起人となった「あの夏を取り戻せ~全国元高校球児野球大会2020-2023~」が今秋、阪神甲子園球場で開催されることが決定し、5月18日に同学有明キャンパスで記者発表会が行われた。大武さんは「このプロジェクトには、2つの目標がある。一つは、高校3年生の時の悔しい思いを晴らすこと。そしてもう一つは、若者が挑戦できる社会をつくるきっかけになること」と開催への思いを語った。また、記者発表会にはスペシャルゲストとして元プロ野球選手の古田敦也さんも登場し、大武さんら同プロジェクトに挑戦する若者たちにエールを送った。

 2020年、新型コロナウイルスの影響により「第102回全国高等学校野球選手権大会」が中止となった。大武さん自身も元高校球児で、当時は城西大学附属城西高校で野球に打ち込む日々を送っていた。「夏の甲子園大会の中止が決まった20年5月20日、自分たちの声は全く届かないんだと、無力感や喪失感を味わったことを覚えている。その時の悔しい思いを胸に、もっと社会に若者の思いを届けていきたいと考え、アントレプレナーシップ学部に入学した」と話した。

 その後、自分にしかできないことを考えるようになった時に、同じ思いを持つ仲間とともに高校野球をやり切ったと実感したいと思い、22年夏にこのプロジェクトを立ち上げた。立ち上げ当初は、SNSを通じて当時の各都道府県の独自大会優勝チームを中心に、全国の元高校球児に参加を呼び掛けた。同時にプロジェクトメンバーの募集、ウェブサイトや各種SNSを開設。メディアへの露出を通して本大会にかける想いを全国に訴えていった結果、22年10月には46チーム、総勢1000人の元高校球児の参加が決定し、プロジェクトチームも結成された。

 そして、この3月に、11月29日に阪神甲子園球場で、大会を開催できることが決定。当日は全46チームの試合を行うことが難しいため、セレモニーや記念写真撮影、特別記念試合を開催し、翌11月30日と12月1日の日程で、兵庫県内の別会場で各チームの交流戦の実施を検討している。

 この日の会見で、大会に参加する福井県敦賀気比高校OBの宮階宣全(みやがい・よしのり)さんは、大会中止が決まった当時のことを「泣き崩れる選手もいたし、現実を受け止められなかった。その後、後輩たちが甲子園に出場したが、テレビでさえ見られなかった」と振り返った。そんな時にこのプロジェクトの話を聞き、「最初はそんなことができるとは思わなかった。それが今、こうして形になろうとしていて、感謝の気持ちでいっぱいだ。福井県代表として出場させてもらうが、全国のコロナ世代の思いを背負って、今できる最大限のことをして、自分の中でも区切りを付けたいと思っている」と力を込めた。

 オンラインで会見に参加した岩手県一関学院高校OBの佐々木春磨さんは「当時、監督が『誰かのために戦いなさい』と伝えてくれたことが今でも心に残っている。このプロジェクトは、僕たち当時の選手のためだけでなく、保護者や指導者など、支えてくれた人のためのものであると思っている」と笑顔を見せた。

 さらに、元プロ野球選手の上田剛史さんや宮本慎也さんからも応援ビデオメッセージが届き、記者会見場にはスペシャルゲストとして古田さんが登場。「コロナを乗り越えた若者たちが、こうした素晴らしいプロジェクトをやりたいと立ち上がり、実現しようとしている。参加するみんなが笑顔で11月を迎えられることを願っている」とエールを送った。

 大武さんは「高校まで野球しかやってこず、スキルも経験もない自分でも、多くの人たちの協力を得てこのプロジェクトを実現しようとしている。これを見て、誰かが何かをやってやろうと思えるきっかけになれば」と思いを語った。

 大会は非営利目的で行い、球場使用料や参加者の交通費などを含めた大会運営資金7000万円をクラウドファンディングによる寄付で集める。余剰金は全国の高校野球チームにバットやボールを寄付する形で還元する予定。クラウドファンディングは6月7日からのスタートを予定している。

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