英語力の格差「言語活動の長さや教員の英語力が背景」 文科相

英語力の格差「言語活動の長さや教員の英語力が背景」 文科相
2022年度の英語教育実施状況調査の結果について語る永岡文科相
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 文科省が5月17日に発表した2022年度の「英語教育実施状況調査」で、中高生の英語力が昨年度に比べて改善したものの、第3期教育振興基本計画(2018~22年度)の目標値にはわずかに届かない結果となったことについて、永岡桂子文科相は23日、閣議後会見で「中学生・高校生の英語力は、年々着実に向上している」と評価した上で、「依然として、自治体間で生徒の英語力の数値に開きが見られるという課題もある」と、自治体間の格差を指摘。授業中の言語活動の長さ、教員の英語力や発話などの状況が、地域により異なっていることが、その背景にあるとの見方を示し、各自治体の取り組みを支援していくと述べた。

 第3期教育振興基本計画では、「中学校卒業段階でCEFR A1レベル相当以上を達成した中学生の割合」、「高校卒業段階でCEFR A2レベル相当以上を達成した高校生の割合」を、それぞれ50%とする目標を掲げていた。22年度の調査結果では、中学生が49.2%、高校生が48.7%と、それぞれ目標をわずかに下回った。

 この結果について永岡文科相は「第3期の教育振興基本計画に掲げる目標値に、あと一歩及ばなかったということは大変残念ではあるが、中学生・高校生の英語力は、年々着実に向上しているものと認識している。教育委員会や、現場の教員に感謝したい。そして何よりも、子供たちの学習成果が調査結果に表れてきているものと考えている」と評価した。

 一方、調査結果では自治体間の格差が大きい実態も明らかとなった。中学生について目標値の50%を上回ったのは24自治体で、さいたま市では86.6%、福井県では86.4%に上った一方で、島根県(34.1%)や鳥取県(34.6%)など、30%台にとどまった自治体も12自治体あった。

 これについて永岡文科相は「調査結果の分析から、授業中に生徒が英語を使って活動する言語活動の時間の長さ、教師の英語力や発話などが、生徒の英語力の向上と関連していることが分かっていて、これらの取り組みの状況が、地域によって異なっているということが要因であると考えている」と説明した。

 その上で「文科省から今回の調査結果のフィードバックを行っており、各自治体には必要な改善を行うなど、今回の結果を活用して、英語教育の改善・充実に努めてほしい。今後は教育委員会の担当者が集まる会議などでも、具体的に課題などを説明するとともに、全国学力・学習状況調査の結果と合わせ、さらに把握・分析を行い、成果を上げている自治体の好事例を全国に展開していくなど、各自治体における取り組みをしっかりと支援をしていきたい」と述べた。

 今年度から始まる第4期教育振興基本計画の中教審答申では、生徒の英語力について「中学校卒業段階でCEFRのA1レベル相当以上、高校卒業段階でCEFRのA2レベル相当以上を達成した中高生の割合の増加を5年後に6割以上とする指標を提言。加えて、それらの生徒の割合を「全ての都道府県・政令市において、5年後までに5割以上にすることを目指す」という、自治体間格差の是正を図る指標も盛り込まれている。

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