こどもの居場所 「ニーズがあっても支援につながっていない」

こどもの居場所 「ニーズがあっても支援につながっていない」
各委員の取り組みについて報告があった「こどもの居場所部会」(YouTubeで取材) 
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 こども家庭審議会は5月31日、第2回「こどもの居場所部会」をオンラインで開催し、「こどもの居場所づくりに関する指針(仮称)」の策定に向けて、各委員の取り組みについてのヒアリングを行った。委員からは「地域の居場所だけではつながれないこどももいる。最初の一歩を踏み出すにはオンラインの居場所も有効」「ニーズがあるにも関わらず、支援につながっていないこどもが多くいる」「学校とこどもの居場所の議論をどう融合していくのかが、最重要課題だ」といった報告や意見が出された。

 認定NPO法人カタリバの中島典子氏は、同団体が自治体と協働で行っているオンラインを活用した居場所づくりについて報告。「地域の居場所だけではつながれないこどもがいる。例えば、対人関係が苦手な子、自転車圏内に地域の居場所の選択肢がない子、地域の固定的な人間関係の同調圧力を感じている子など、さまざまな子がオンラインだと一歩を踏み出せた」と話した。その上で、「ただ、こどもたちの居場所がオンラインだけで完結できるとは思っていない。初めの一歩を踏み出しやすいオンラインの居場所を活用し、そこから地域の居場所につながっていけるといい」と意見を述べた。

 宇地原栄斗委員(認定NPO法人Learning for All 子ども支援事業部エリアマネージャー)は、同団体で運営している関東・関西で合わせて7カ所の放課後を中心とした居場所について報告。活動の中で見えてきた課題について、「ニーズがあるにも関わらず、支援につながっていないこどもが多くいることが分かった」と話した。

 例えば、虐待通告と一次保護を繰り返していたにもかかわらず、こどもも保護者もどこにもつながらず、必要なサポートを受けられていないケースや、5年以上不登校のまま、どこにもつながっておらず、受験直前になって友人に連れられて初めて居場所につながったケースなどがあったといい、「ニーズのあるこどもと、『出会う』『つながる』『支える』それぞれのフェーズで課題がある」と強調した。

 今後に向けて、「例えば、学校・SSW(スクールソーシャルワーカー)・行政・民生児童委員など、地域でこどもにかかわる大人が相互に連携することでニーズを抱えるこどもとつながったり、行政が保有するデータベースを活用したアウトリーチを推進したりすることが必要ではないか。また、行政・民間がそれぞれ持つ情報や専門性を掛け合わせた支援を行うため、児童福祉担当部局と民間の支援機関との協働が必要だ」と提案した。

 湯浅誠委員(東京大学先端科学技術研究センター特任教授)は、子ども食堂から考える「こどもの居場所づくりに関する指針」の方向性について意見を述べた。まず、子ども食堂にまつわる「参加に条件がないところ 78.4%」「高齢者も参加しているところ 62.4%」「こども専用のところ 4%」といった数値を紹介し、「こどもの貧困対策と、子育て支援、地域づくりのそれぞれの境界ははっきり分かれているわけではなく、全てがつながっている」と指摘した。

 その上で、「こども家庭庁として目指すところは、『より多くの子によりたくさんの居場所を』と、『どんな子にも少なくとも一つの居場所を』の両方を合わせたものだろう」と話し、「みんな(多世代)の中にこどももいる、元気な地域がこどもの育ちを支える、という“みんながまんなか”の社会を将来的にはつくっていきたい。10年、20年先を見据えた指針を目指していきたい」と述べた。

 また、今村久美委員(認定NPO法人カタリバ代表理事)は「学校とこどもの居場所の議論をどう融合していくのかが、最重要課題だ」と指摘。「学校の先生たちがこどもたちを毎日見ている中でリスクを感じていることは実際に多く、SC(スクールカウンセラー)などよりも前に察知していることも多い。社会資源と学校の先生がもっとつながる手段を考えていかないと、先生が把握していることが宝の持ち腐れになってしまっている」と問題提起した。

 今後、同部会は居場所づくりの関係団体や、当事者のこどもへのヒアリングを重ね、8月には「こどもの居場所づくりに関する指針(仮称)」の論点提示を行い、年内をめどに指針を取りまとめる予定。

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