こどもの自殺が過去最多となったことを受けて、早急な対策強化を検討してきた政府の「こどもの自殺対策に関する関係省庁連絡会議」は6月2日、第4回会合をこども家庭庁で開き、「こどもの自殺対策緊急強化プラン」を取りまとめた。GIGAスクール構想で使われている1人1台端末を活用し、自殺のリスクを把握できるシステムの普及や都道府県などでの「若者の自殺危機対応チーム」の全国設置を目指す。関係機関が保有している自殺に関するデータを集約し、多角的な要因分析を行うことも盛り込んだ。強化プランの内容は、6月中に閣議決定される「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太の方針)に反映される。
こども家庭庁が発足してから初めて作成されたプランでもある今回の強化プランは、関係省庁連絡会議での専門家からのヒアリングなどを基に、約1カ月の短期間でまとめられた。会議の冒頭、議長の小倉将信こども政策担当相は自らも当事者から話を聞いたり、長野県の取り組みを視察したりしたことを報告。
「生きづらさに直面し、傷ついたことのある若い人お二人にお会いし、直接お話を伺うことができた。お二人からは自身の経験を踏まえ、保護者の理解促進や保護者への支援の充実、相談窓口や支援機関の利用の抵抗感を減らすための周知などについて、率直にご意見を頂いた。先月28日には長野県に出向き、専門家の知見を生かして地域の実情に応じた支援を行っている『長野県子どもの自殺危機対応チーム』の皆さまと意見交換を行ってきた。さまざまな専門職の方が専門性を発揮しながら緊密に連携していく、このような取り組みが非常に効果的だと理解できた」と述べ、さまざまな専門家や当事者の声が反映された強化プランであることを強調した。
強化プランでは、GIGAスクール構想で学校に導入されている1人1台の学習者用端末を活用し、こどもの自殺リスクの把握や適切な支援につなげるため、有償・無償で利用できるシステムやその活用法、マニュアルなどを整理し、教育委員会に周知。全国の学校での実施を目指すと同時に、科学的根拠に基づいた対応や支援を可能とするための調査研究を実施する。
また、全ての児童生徒が年に1回、「SOSの出し方に関する教育」を受けられるように周知したり、こどもからのSOSをどのように受け止めるか、教員や保護者が学ぶ機会を設けたりする。発達段階に応じて、心の健康に関して系統的に指導できる啓発資料の作成も行う。
長野県の取り組みなどを参考に、多職種の専門家で構成される「若者の自殺危機対応チーム」を都道府県などに設置。自殺未遂や自傷行為の経験がある若者など、市町村では対応が難しい場合に、危機対応チームが助言を行うモデル事業を拡充させ、危機対応チームの運営に関するガイドラインの作成など、自治体に対する必要な支援を行い、全国展開を目指す。
これらに加え、警察や消防、学校、教育委員会、自治体などが保有する自殺に関する統計や関連資料を集約し、多角的に分析する調査研究を立ち上げ、こどもの自殺の実態解明や課題把握に取り組むことも打ち出した。
強化プランの内容は骨太の方針への反映を目指すほか、これから策定される「こども大綱」にも盛り込む方針。