経済的に困窮している家庭の高校生の4割で、奨学金や教育ローンを利用した経験があるということが6月2日、子どもの貧困問題に取り組む認定NPO法人のキッズドアが公表した調査結果で明らかになった。キッズドアではこうした状況を踏まえ、高校生に対する奨学給付金や児童手当の増額など、経済的な支援の拡充を求めている。
調査は3月17日~4月9日に、キッズドアが実施している学習会やファミリーサポート事業、奨学金の利用対象になっている高校生世代の人に実施。351件の回答を得た。回答者の8割は母子世帯で、家庭の経済状況が「大変苦しい」と答えたのは36%、「苦しい」と答えたのは46%を占めた。
小中学校のときと比べて、高校での生活にはお金がかかると思うかと尋ねたところ、91%が「思う」と回答。高校在学中に、公的な奨学金や助成金、教育ローンなどを「利用したことがある」と答えたのは43%を占めた。
家庭の経済状況が進路決定に「おおいに影響」したと答えたのは58%、「ある程度影響」したと答えたのは32%で、具体的には、一般入試ではなく学校型選抜や総合型選抜で行けるところにしたり、自宅から通える範囲のところを考えたりしているなどの影響がみられた。
また、奨学金は入学金などの納付前に受け取れるようにしてほしいと答えた割合も90%に上った。
調査結果を踏まえ、キッズドアでは、高校生などの奨学給付金や児童手当の増額などの経済的支援を拡充することや、奨学金の支給時期を入学前に早めることの検討などを提言した。
厚労省で記者会見したキッズドアの渡辺由美子理事長は「高校生に関しては本当に厳しい状況で、私たちも驚いたのが、高校生のうちから教育ローンや奨学金などの貸付を受けている子どもたちが多かった。教育格差の問題として、低所得家庭の子どもは学力が低くなることは分かっていたが、それ以外にも交友関係や日常生活、大学進学のために修学旅行はあきらめるというような声もあった。人としての尊厳まで失われているような状況にあり、こういったことを防ぐことが重要だ」と指摘した。