中教審デジタル学習基盤特別委の下に設置された「次期ICT環境整備方針の在り方ワーキンググループ(WG)」が6月8日、初会合を開いた。現行の「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」が2024年度末に期限を迎えることから、これまでの1人1台端末の調達方法・内容・コストなどを評価するとともに、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を見据え、25年度以降の端末やネットワークなどの整備の在り方を検討する。
初会合では、文科省の担当者がGIGAスクール構想の評価を報告。1人1台端末を授業で活用している割合は、全国平均で見ると「ほぼ毎日」「週3回」の学校で約8割を占めるが、都道府県別に見ると地域差が大きいこと、教員と生徒・生徒同士がやりとりする場面での使用割合が比較的低いことなどが示された(22年度全国学力・学習状況調査)。
同省からはまた、ICT環境の整備状況についての報告もなされた。22年3月時点で、児童生徒用端末は1人1台環境をおおむね実現している一方、指導者用端末については、全員分整備されていない自治体が約4割に上っていることや、普通教室のインターネット整備率は平均96.7%(22年3月)に上る一方、児童生徒の半分以上が同時に端末を使う際に、遠隔授業に必要な1人当たり2Mbps以上の接続速度を確保できる学校の割合は4割未満(23年2月)となっているなどの実態が報告された。
委員からは今後のICT環境整備に向けて、さまざまな意見や要望が出された。小髙美惠子委員(埼玉県戸田市教育委員会学校経営アドバイザー)は「複線的な学び、子供が自己調整する学びを日常的に実現するためのICT環境を全国標準としたい。また、教員の働き方改革が求められる中、学習系・校務系を一体化したシステムを標準としていくことも課題だ」と指摘。また片山敏郎委員(新潟市立大野小学校校長)は「安価で脆弱(ぜいじゃく)な端末を選択すると故障率が高くなり、結果的に費用が掛かることになる。毎日活用しても十分なスペックを検討する必要がある」と述べた。
さらに柴田功委員(神奈川県立希望ケ丘高校校長)は「高校ではちょっとした学習活動はスマートフォンで済ませてしまい、1人1台活用がかえって進んでいない自治体がある。自分で価値を作り出す活動を増やすことで、活用が進むと考えられる。また高校段階では端末整備を保護者負担で進めている場合と、自治体負担で進めている場合の両方があり、どちらがよりよいのかも検討していく必要がある」と指摘した。
高橋純主査(東京学芸大学教育学部教授)はICT環境整備について「(既存の教育への)付け加えと考えるのではなく、校務、学習、研修などあらゆる学校教育のレイヤー(層)に溶け込んで、より質が高く、働き方も改善されるような基盤としての環境を検討しなければならない」と述べた。
同WGの委員は次の通り(五十音順、敬称略)。
▽石井一二三(青森県八戸市立江陽小学校教頭)▽小髙美惠子(埼玉県戸田市教育委員会学校経営アドバイザー)▽片山敏郎(新潟市立大野小学校校長)▽木田博(鹿児島市教育委員会事務局教育部学校ICT推進センター所長)▽柴田功(神奈川県立希望ケ丘高校校長)▽高橋純(東京学芸大学教育学部教授)▽中川哲(東京都港区教育委員会教育情報参事官、立命館大学OIC総合研究機構客員教授)▽中村めぐみ(茨城県つくば市立みどりの学園義務教育学校教頭)▽堀田龍也(東北大学大学院情報科学研究科教授、東京学芸大学大学院教育学研究科教授)▽水谷年孝(愛知県春日井市教育委員会教育DX推進専門官)