来年度予算「教科担任制の拡充」「支援員の全校配置」を重視 自民党

来年度予算「教科担任制の拡充」「支援員の全校配置」を重視 自民党
自民党文科部会の冒頭、あいさつする中村部会長
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 2024年度予算編成方針となる「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太の方針)の原案を巡り、自民党の文部科学部会は6月8日、教員の働き方改革に向けた24年度予算の要望内容として「小学校高学年教科担任制の拡充」と「教員業務支援員の全ての小中学校への配置」の2項目を重視し、骨太の方針に盛り込むよう政府に求めていくことで一致した。原案に盛り込まれた給特法の教職調整額など教員の処遇改善については、「『見直し』という曖昧な表現ではなく、増額や拡充にすべきだ」との意見が相次ぎ、改善の方向性をはっきりさせる表現に修正するよう要請することを確認した。

 会合後、記者団の取材に応じた中村裕之部会長は、24年度予算で取り組む内容について、「いきなり(教員の時間外勤務を)『月20時間程度』にするのは難しいが、24年度予算では『小学校高学年教科担任制の拡充』と『教員業務支援員の全ての小中学校への配置』をしっかりやっていきたい。そこから始まって、3年間でしっかり改革をしていきたい」と説明。24年度から3年間を教員の働き方の「改革期間」として骨太の方針に明記するよう求める考えを示した。

 自民党では、特命委員会(委員長・萩生田光一政調会長)が5月16日にまとめた提言「令和の教育人材確保実現プラン」で、教員の時間外勤務を「将来的に月20時間程度」とする目標を掲げて学校のマンパワーを大幅拡充するとともに、これに見合う教員の時間外手当として給特法で給与の4%と定められている教職調整額を10%以上に引き上げる方針を表明。これらを実現するために24年度から3年間を「予算・制度両面を抜本的に改革する期間」と位置付けるよう政府に求めている。

 中村部会長の説明は、この提言に沿ったもの。それを実現する道筋として、24年度予算では「小学校高学年教科担任制の拡充」による教員の定数増を加速させるとともに、「教員業務支援員の全校配置」によって教員の本来業務以外の負担を減らすことに取り組む考えを表明。その上で、教職調整額の引き上げなど給特法の改正を含む教員の処遇改善については、中教審の審議などを踏まえ、「法改正は再来年の通常国会を見込んでいる」と述べ、25年度予算案の関連法案として給特法改正に取り組むスケジュールを示した。

 小学校高学年教科担任制は、教員定数を22年度予算から年間950人の加配定数として改善し、4年間で計3800人の改善を図る計画で現在進められている。19年度の学校教員統計調査を基にした文科省の試算によると、小学校教員1人当たりの平均担当授業時数(持ちコマ数)は、19年度の週24.6コマから25年度には週21コマ程度に減ることになる。教員はこれによって生じた週3.5コマ分を授業準備や教材研究、児童への個別指導などに充てることができ、その分、時間外勤務を減らすことが可能になるとされる。

 小学校高学年教科担任制の拡充について、自民党の萩生田政調会長は教育新聞のインタビューで、「4年間の最終年度になる25年度の改善分を前倒しして24年度予算にまとめて実施すれば、それだけ早く教員の働き方に余裕が生まれる」と述べている。一方、文科省は初年度となった22年度の予算要求段階では、4年間で8000人を改善し、小学校教員の持ちコマ数を週5コマ程度減らして週20コマ以下にすることを目指していながら、予算折衝の過程で規模を圧縮された経緯もある。

 教員業務支援員の全校配置については、教員の負担軽減を図るため、文科省が昨年8月の23年度予算要求で、小規模校を除く全ての小中学校に教員業務支援員を配置するとして2万4300人分、103億円を要求。予算折衝の結果、23年度予算では1万2950人、55億円が計上され、14学級以上の規模の小中学校に教員業務支援員1人を配置するかたちになった。

 これについて、萩生田政調会長は教育新聞に「教員業務支援員は、もはや学校にとって必要不可欠。児童生徒の規模に応じて、全国全ての小中学校に1人ないし2人、大規模校だったら3人もあるかもしれない」と説明。教員業務支援員の役割について、文科省は「卒業生の保護者など、それぞれの小中学校をよく知っている人に『チーム学校』の一員になってもらうことを想定している。学習プリントの準備や採点業務、来客や電話の対応などをやってもらえれば、教員は児童生徒への指導や教材研究により注力できる」(初等中等教育局財務課)と重視している。

 こうした状況を踏まえ、自民党は24年度予算をにらんで骨太の方針に「小学校高学年教科担任制の拡充」と「教員業務支援員の全校配置」を盛り込むよう求めた。

 また、中村部会長は、教員の処遇改善を巡って骨太の方針の原案が「教職調整額の見直しや(中略)各種手当の見直し」などと表記していることについて、文科部会での議論を紹介し、「特に意見が強かったのは、教員の処遇の見直しとか手当の見直しという曖昧な表現を、ちゃんと増額や拡充などにするべきだとの意見だった」と述べ、改善の方向性を明示する表現に修正するよう政府に求めていくことを表明。また、給特法による教職調整額について、特命委員会の提言が打ち出した「10%以上に増額」という文言を骨太の方針に盛り込むよう、改めて要請する考えを確認した。

 骨太の方針に財源として「教育国債」の発行を記載するよう求めるかとの記者の質問には、「教育国債という文言を求めることにはならないかもしれないが、全体として、岸田文雄首相が重要だと言っている『人への投資』が、今まで十分ではなかったのだから、これを対策期間の3年間で重視をすることをしっかり言いたい」と答えた。

 GIGAスクール構想に関連した端末の更新費用については「自治体ごとの格差が生じてはならないので、国費で行うべきだという意見が大勢だった。活用が十分にできてない地域については、文科省が支援すべきだという意見があった」と述べ、国費負担を骨太の方針に明記することを求める考えを示した。

 給食費の無償化を巡り、骨太の方針原案で「課題整理等を行う」と記述されていることについては「早く進めるべきだという意見が複数あったが、ここは一定の整理ができている」と述べ、表現の修正を求めないことを明らかにした。その理由について、中村部会長は「低所得世帯はすでに無償化されている。国費を投入した場合、それ以上の世帯に支援が偏る。そういったことも含めて、あるべき姿を検討することになる。給食を栄養教育とみる考え方もあるが、どちらかというと、子育て支援の範疇で捉えられているのではないか」と説明した。

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