政府は6月16日、第4期教育振興基本計画(2023~27年度)を閣議決定した。今年3月に中教審が取りまとめた答申を踏まえ、「2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成」「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」をコンセプトとし、5つの基本的な方針と16の教育政策の目標を盛り込んだ。これに加え、答申以降に公表された教員の働き方改革や処遇改善、不登校対策、児童生徒の自殺対策などが追記された。
今回の教育振興基本計画は昨年2月、当時の末松信介前文科相が中教審に策定を諮問し、今年3月に答申が取りまとめられた。今回閣議決定された計画では、この答申の内容に、3月以降に公表された施策などが追記された。その中で、学校における働き方改革に関連して、4月に公表された教員勤務実態調査(22年度)の結果などを踏まえ、「学校における働き方改革のさらなる加速化、処遇改善、指導・運営体制の充実、教師の育成支援を一体的に進める」と明記された。
加えて「教職調整額の水準や新たな手当の創設を含めた各種手当の見直しなど、職務の負荷に応じたメリハリある給与体系の改善を行うなど、給特法などの法制的な枠組みを含め、具体的な制度設計の検討を進め、教師の処遇を抜本的に見直す」「24年度から3年間を集中改革期間とし、スピード感を持って、24年度から小学校高学年の教科担任制の強化や教員業務支援員の小・中学校への配置拡大を速やかに進めるとともに、24年度中の給特法改正案の国会提出を検討する」といった内容が追記された。
また不登校児童生徒への支援については、今年3月に策定された「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」に基づき、「①多様な学びの場の確保②1人1台端末などを活用した早期発見・早期支援の実施③学校風土の『見える化』――を通じて、学校を『みんなが安心して学べる』場所にすることなどの不登校対策を推進する」とされ、「校内教育支援センター(スペシャルサポートルームなど)の設置促進」「オンラインの活用も含め、こうした専門家にいつでも相談できる環境の整備」「NPO・フリースクールなどとの連携」などの取り組みが盛り込まれた。
児童生徒の自殺対策の推進については、こども家庭庁などが6月2日に取りまとめた「こどもの自殺対策緊急強化プラン」を踏まえ、「全ての児童生徒が『SOSの出し方に関する教育』を年1回受けられるよう全国の教育委員会などに周知し、SOSの出し方に関する教育を含む自殺予防教育を推進するとともに、1人1台端末を活用し、自殺リスクの早期把握や適切な支援につなげるため、システムの活用方法などを周知し、全国の学校での実施を目指すなど児童生徒の自殺予防に向けた取り組みを推進する」などと追記された。
他にも、GIGAスクール構想の1人1台端末について「公教育の必須ツールとして、更新を着実に進める」としたほか、英語力育成の指標として「特にグローバルに活躍することが期待される層の拡充に向けて、高校卒業段階でCEFRのB1レベル相当以上を達成した高校生の割合の増加(5年後目標値:3割以上)」などを加えた。
教育基本法では「政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針および講ずべき施策、その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない」と定めており、自治体はそれを踏まえて、地域の実情に応じた基本的な計画を定めるよう努めることとされている。