24年度に給特法改正案、「集中改革期間」を明記 骨太方針決定

24年度に給特法改正案、「集中改革期間」を明記 骨太方針決定
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 政府は6月16日、経済財政諮問会議(議長・岸田文雄首相)と臨時閣議を相次いで開き、来年度予算の編成方針となる「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太の方針)を閣議決定した。長時間労働やなり手不足が深刻化している公立学校の教員を巡り、たたき台となった原案に大幅な加筆修正が行われ、2024年度から3年間を「集中改革期間」と位置付けた。その具体的なアプローチとして、24年度から小学校教員の授業持ちコマ数の削減につながる「小学校高学年の教科担任制の強化」や教員の負担を軽減させる「教員業務支援員の小・中学校への配置拡大」を進めるとともに、残業代の代わりに月給の4%を教職調整額として支給することを定めた給特法についても「24年度中の改正案の国会提出を検討する」と明記した。政府が給特法改正のスケジュールを具体的な年限を区切って示すのは19年の法改正以降、初めてとなる。地方自治体から国費負担を求める意見が強い1人1台端末の更新費用については、GIGAスクール構想を「国策として推進する」とした上で、「公教育の必須ツールとして、更新を着実に進める」と国費負担をにじませる表現にとどまった。

 今回の「骨太の方針」は、総論に当たる第1章「マクロ経済運営の基本的考え方」と、各論を説明した第2章「新しい資本主義の加速」から第5章「当面の経済財政運営と令和6(24)年度予算編成に向けた考え方」まで、前年よりも5㌻多いA4版45㌻に膨らんだ。「骨太の方針」は、政府が当面取り組む政策の方向性を省庁横断でまとめたもので、各省庁はこの方向性に基づいて来年度以降に取り組む政策を個別に立案し、その実現に必要な経費を算定して8月末に来年度予算の概算要求を行う。

 教員の働き方改革や処遇改善、GIGAスクール構想など学校関連の政策は「質の高い公教育の再生等」と題された項目で、2㌻にわたって書き込まれた。6月7日の経済財政諮問会議で示された原案から、政府内部や与党との調整を経て大幅に加筆修正されたのは、学校の働き方改革と教員の処遇改善に関わる項目となる。

 具体的な修正点をみてみると、まず、教員の処遇について、原案では「教職調整額の見直しや、各種手当の見直しにより、職務の負荷に応じたメリハリある給与体系を構築する」と表現していたが、これを「教職調整額の水準や新たな手当の創設を含めた各種手当の見直しなど、メリハリある給与体系の改善を行う」と変更した。「新たな手当の創設」を明記することで、文科省の調査研究会による論点整理や自民党の政策提言「令和の教育人材確保実現プラン」で指摘されている「学級担任手当の創設」「主任手当の対象拡大」などが検討対象となる方向性が出てきた。さらに「メリハリある給与体系」についても原案の「構築」から「改善」に強められ、教員の処遇を現状から改善するというベクトルが鮮明になった。

 最も大きな修正点は、教員の働き方改革や処遇改善を実現していくスケジュールについて、大ざっぱな内容ではあるが、年限を区切った枠組みを示したこととなっている。24年度から3年間を「集中改革期間」と位置付け、来年度となる24年度予算で教員の負担軽減につながる「小学校高学年の教科担任制の強化」と「教員業務支援員の小・中学校への配置拡大」に取り組むことを明確にした。閣議決定された「骨太の方針」に盛り込まれたことは、これらの施策を実現するために予算化を進めることを意味する。

 小学校高学年教科担任制は、教員定数を22年度予算から4年間で計3800人の改善を図る計画で現在進められており、文科省の試算によると、小学校教員1人当たりの平均担当授業時数(持ちコマ数)は、19年度の週24.6コマから25年度には週21コマ程度に減る。教員業務支援員の配置は、23年度予算に1万2950人分となる55億円が計上され、14学級以上の規模の小中学校に教員業務支援員1人を配置するかたちになっている。今回の「骨太の方針」では、こうした教員の負担軽減を図る施策を3年間の「集中改革期間」の初年度に、さらに加速させる道筋が示されたことになる。

 「集中改革期間」の2年目には、給特法の改正に取り組むことが確実になった。「骨太の方針」では「2024年度中の給特法改正案の国会提出を検討する」と明記されている。給特法については、教員の職務の特殊性を理由に、月給の4%を教職調整額として支給する代わりに残業代を支払わないという仕組みが、長年にわたって学校現場に時間管理をおろそかにさせ、教員の長時間勤務を常態化させる温床になっているとの批判が強い。一方で、自民党の政策提言「令和の教育人材確保実現プラン」では、教員の「崇高な使命」「高度な専門性と裁量性」などを理由に「時間外勤務手当化は取るべき選択肢とは言えない」として、教員の負担軽減を進めて時間外勤務時間を「月20時間程度」とするとともに、教職調整額を「少なくとも10%以上に増額」させるという考えを提示した。文科省では、中教審に特別部会を設置して、来年春ごろに答申を取りまとめる方針を示している。

 この給特法改正案について「2024年度中の国会提出を検討する」ということは、こうした議論を踏まえ、政府は25年度予算案の審議に合わせ、25年1月ごろに招集される通常国会に給特法改正案を提出するというスケジュールが浮かび上がってくる。

 GIGAスクール構想で全国の小中学校に配備された1人1台端末の更新費用については、地方自治体から国費負担を求める意見が強く、与党からも自民党文科部会で「自治体ごとの格差が生じてはならないので、国費で行うべきだ」との意見が大勢を占めるなど国費負担を明示するよう求める声が出ていた。だが、調整の結果、閣議決定された「骨太の方針」では、「各地方公共団体による維持・更新に係る持続的な利活用計画の状況を検証しつつ、国策として推進するGIGAスクール構想の1人1台端末について、 公教育の必須ツールとして、更新を着実に進める」との表現になった。

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