こども誰でも通園制度 関係団体が保育現場の負担増を懸念

こども誰でも通園制度 関係団体が保育現場の負担増を懸念
指針に関して関係団体からヒアリングを行った、幼児期までのこどもの育ち部会第3回会合(Youtubeで取材)
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 「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針(仮称)」の策定に向けた議論を行っている、こども家庭審議会の「幼児期までのこどもの育ち部会」は6月26日、第3回会合をオンラインで開き、関係団体からヒアリングを行った。政府の「こども未来戦略方針」で創設が盛り込まれた、月に一定の利用可能枠内で、就労要件を問わず時間単位で柔軟な利用ができる新通園給付「こども誰でも通園制度」などに関して、関係団体からは、保育現場の負担が増すとの懸念や、保育施設の在り方そのものを大きく転換する議論の必要性などを求める声が寄せられた。

 この日の会合では▽認定こども園連盟▽全国小規模保育協議会▽日本保育協会――の3団体から、指針に関するヒアリングを行った。

 認定こども園連盟の宮﨑啓会長は、父親の子育て参加などが進む中で、社会の家族観や夫婦観を粘り強く変えていく必要があるとした上で、「(保育の現場で)ゆとりのない状況が継続してしまうと、『こどもまんなか』にどれくらい手が届くのかという懸念も持っている。保護者の状況として、仕事と子育ての両立以上に、子育てが負担だという方も少なからず増えている。保育士・保育教諭も、仕事が多忙を極めている中で、そういう感情にさらされるので、非常に負担が大きくなってきている。これも、私たちの業界が敬遠される理由の一つなのではないか」と、保育現場の負担の大きさを指摘。

 「どんな人が来ても受け止められる『余白』が必要だ。『こども誰でも通園制度』が今後の大きな柱になると思うが、これがどういった制度設計になるのか、どういった人が対象となるのか、どのような利用が見込まれるのかに関しても、職員の配置がポイントになってくる。現状だけではなかなか難しいこともご理解いただきたい」と、「こども誰でも通園制度」などの新たな取り組みに対して、心理的な面も含めてゆとりのない保育現場の窮状を訴えた。

 全国小規模保育協議会の駒崎弘樹理事は「これからは地域の子育て支援の拠点としての保育園にますますなっていくことが考えられる。『こども誰でも通園制度』が施行されればなおのこと、自分たちの園の子だけでなく、地域の子はみんな私たちの子どもという世界が訪れる。それに伴って、保育をするのみではなく、総合的に児童福祉を行っていくように生まれ変わることが考えられる。例えば病児保育や子育て広場、相談支援、障害のある子も包摂し、かつこども食堂も開くなど、保育園が地域のハブとなり、こどもたちを支えていく。『保育園から地域親子園へ』とわれわれは呼んでいるが、新しい保育のビジョンが、われわれの目の前にあるのではないか」と、保育施設が多機能化し、地域に開かれていく方向性を提示。さらに、将来的には3歳以上の幼児教育・保育の義務化を進めるなど、事実上の就学年齢の前倒しにも踏み込んだ。

 また、日本保育協会の坂﨑隆浩理事は、新たな施策と保育現場の状況に大きなギャップが生じていることに対する懸念を表明。「部会が示すこどもの育ちの方向性は誠にその通りだと思う。しかしながら、それを進める保育現場の方に不安があり、齟齬(そご)があるのではないか、施策の理念のみが先行して、実務を抱えきれないのではないか、と私自身は思っている。『こども誰でも通園制度』のような多様な支援ニーズを考えると、現行の体制で本当にできるのか。ある意味で発想転換も視野に入れて、抜本的な見直しを図る必要がある。つまり、保育施設の新グランドデザインの構築が急務ではないか」と提案した。

 この保育施設の新グランドデザインについて、質疑の中で明和政子委員(京都大学大学院教育学研究科教授)は「今、保育園などが定員割れになっている。少子化が進んで、こうした事態がこれからも続く点から申し上げたいのは、こどもをどうするのかという発想だけではなく、親育ての時空間として、こうした地域の子育て、ハブ機能を強化するくらいの覚悟を持って、少子化対策にあたっていかなければならないと本当に思う」と述べ、保護者が子育てを学ぶ場としての保育所の重要性を挙げ、抜本的な改革に着手していくべきだとした。

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