学習支援や教員の負担軽減にChatGPT活用 吉田准教授講演

学習支援や教員の負担軽減にChatGPT活用 吉田准教授講演
ChatGPTで生成されたレポートを例に説明する吉田准教授(Zoomで取材)
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 「ChatGPT」をはじめとする生成AIが教育現場に急速に普及する中、教員向けにオンライン授業やChatGPTの活用をサポートしている吉田塁東京大学大学院工学系研究科准教授が6月28日、超教育協会(会長・小宮山宏三菱総合研究所理事長)が主催するオンラインシンポジウムで「ChatGPTが教育に与える影響」をテーマに講演した。吉田准教授は、ChatGPTの活用で懸念されているような学習成果物の自動生成よりも、学習プロセスを支援する側面や教員の業務負担を軽減する側面を強調。教育へのChatGPTの影響として、筆記問題の評価方法へのインパクトを挙げた。

 教育工学が専門の吉田准教授はまず、生成AIやChatGPTがコンテンツを生成する仕組みを簡潔に説明。ChatGPTを活用するポイントとして、指示内容をテキストで入力するプロンプトの工夫を挙げ、「簡単なやりとりをして、あまりChatGPTは使えないなと判断する人もいるが、お薦めの方法は、こういうものを出力してほしいというイメージがあれば、そのイメージをちゃんとChatGPTに伝えること。例えば『表形式で出力してください』と言えば表形式で出力してくれるし、『これとこれとこれを列にしてください』とお願いすればそれに沿って出力してくれる。1回のやりとりで終わるというよりも、最初に思い通りの出力にならなかったとしても、対話していく姿勢が重要だ。プロンプトは改善するものだと思ってほしい」とアドバイスした。

 また、実際にChatGPTを使ったレポート課題などの事例を提示しながら、3月から有料で利用可能になった「GPT-4」になると、レポートとしても及第点が取れるくらいのクオリティーのものが出力される可能性を指摘。その一方で、正解や学習成果物になり得るものを出すのではなく、対話を重ねながら学習者の発想を広げたり、思考を助けたりしていくような活用事例も紹介し、「学習者にとって、学習者が作るべきコンテンツを自動生成してしまう側面ももちろんあるが、学習プロセスを支援してくれる側面もある。実は教員を支援してくれるところもあり、選択式の問題などであれば『作ってください』とお願いするとすぐに作ってくれるし、場合によっては解答や解説も作ってくれる。最終的な教員のチェックは必要だが、教員の負荷は低くなり、より良い授業づくりにリソースを割くことができるようになる。必ずしもマイナスな側面だけではなく、むしろプラスの側面が多いと考えている」と強調した。

 その上で吉田准教授はChatGPTが教育に与える影響の一つとして、ChatGPTは選択式の問題に答えるだけでなく、自由記述や小論文も作成できるため、筆記問題の評価方法に大きなインパクトがあると指摘。「(その対策として)ChatGPTを使わせないようにしたり、逆にChatGPTを積極的に使わせたりするようなことが考えられる。ただ、私としては本質的にChatGPTで楽をしたいという授業ではなく、やはり、もっと自分で学びたい、自分で課題に取り組みたいと思ってもらえる授業づくりが重要だと思う」と、これまで教員や学習者に求められてきた力は、ChatGPTが普及してもこれまでと変わらず重要であると呼び掛けた。

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