今後5年程度のこども・若者に関する基本的施策をまとめる、こども大綱の枠組みを議論しているこども家庭審議会の基本政策部会は6月30日、第3回会合を開き、こども大綱の基本的な方針などの案を検討した。基本的な方針では、こども・若者の人格や個性を尊重し、意見表明などの権利の主体として認識することが最初の項目として位置付けられるなど、子どもの権利保障をより重視した形となった。また、政策へのこども・若者の参画・意見反映について調査審議を行う専門委員会を同部会の下に設置する。
この日に示されたこども大綱の枠組みや基本的な方針、大綱が目指す「こどもまんなか社会」について整理した案では、前回の議論を踏まえ、こども大綱が目指す「こどもまんなか社会」の姿をこども・若者を主語に、こども・若者の視点で示すことを確認。基本的な方針案として①こども・若者を意見表明と自己選択・自己決定の主体として認識し、その人格・個性を尊重する②こどもや若者、子育て家庭の視点を尊重し、その視点に立って考える③こどもや若者、子育て家庭のライフステージに応じて切れ目なく対応していく④全てのこども・若者への対応を基本としつつ、こども・若者の現在と将来が、虐待・貧困などその生まれ育った環境によって左右されないようにする⑤仕事や結婚、子育てに希望を持つことができ、その希望をかなえるようにする⑥施策の総合性を確保するとともに、関係省庁、地方自治体、民間団体等との連携を重視する――の6つの項目を打ち出した。
また、基本的な施策については①幼児期まで②学童期③思春期④青年期⑤子育て期⑥各ライフステージに共通する事項等――と、こどもが乳幼児期から若者として社会生活を送り、子育て当事者世代となるまでのライフステージに沿った整理をすることが提案された。
この日の議論では、基本的な方針案で示された筆頭の項目である「こども・若者を意見表明と自己選択・自己決定の主体として認識し、その人格・個性を尊重する」について、複数の委員から意見が相次いだ。
土肥潤也委員(わかもののまち代表理事)は「もし意見表明という言葉を使うのであれば『参画および意見表明』と書いた方が良い。自己決定に関しても、自己決定と共に共同決定という文言を加えていただけると良いと思っている。こどもたちが決定しても、最終的に社会のパートナーとして考えていくという意味では、共同決定という考え方が重要ではないか」と、より、こども・若者の社会参画の視点を意識した表現にすることを提案。
大学生の原田伊織委員(兵庫県尼崎市ユースカウンシル事業Up to You! 第1期代表)は「生活の場での意見反映や日常的に意見を言い合える環境づくりについても、合わせて表記される必要がある。私はユースカウンシル事業という、地域の中でユース世代が政策提言をする、まさしく政策への意見反映を目指して活動している。しかしながら、最初からそうした活動ができたわけではなく、日常的な場、とりわけ尼崎市のユースセンターや、ユースワーカーという職員や権利擁護委員、地域の人々に対して、さまざまな生活の場で意見反映したことを通して『政策についても意見を言ったら反映される』『言っても大丈夫だ』という意識の形成につながっていった過程がある」と、身近な生活の中でこどもが意見を言えることが前提にあることを強調した。
また、清永奈穂委員(日本女子大学学術研究員、ステップ総合研究所所長)は「若者やこども自身が自分の選択をでき、決定をし、自分の意見を表明するのはとても大事なことだが、こどもたちが意見を言う際に、自分が大事にされている、話を聞いてくれる人がいるという安心感がないとなかなか意見が出せない現状がある。私自身は安全教室を全国でしているが、『助けて』と言う練習をする際に、やはり聞いてくれる大人がいる、守ってくれる人がいるということがないと声が出せない。技術的なことを教えるだけでなく安心感、そして自分が尊重されている、必ず助けてくれる大人がいるという信頼感がないと力がつかない」と述べ、大人側の意識改革の重要性を指摘した。
同部会では秋以降に、こども・若者や子育て当事者から意見を聞く取り組みも予定している。こうした当事者の参画や意見反映をどのように実施していくべきかや、自治体への同様の取り組みの普及などを見越し、この日の会合では、こども施策の策定・実施・評価に関するこども・若者の参画、意見反映の在り方や、促進方策の調査審議を行う専門委員会を新たに設置することも決まった。