永岡桂子文科相は7月4日の閣議後会見で、不登校対策の先進的な事例として前日に視察した埼玉県戸田市の取り組みを踏まえ、「各学校に一つ、空き教室を使って校内サポートルームを立ち上げ、教室にいられなくなった子供をサポートしてもらえれば、非常に大きな効果がある」と指摘し、校内教育支援センターの設置を促進するよう改めて各自治体の学校設置者に要請した。また、不登校支援にノウハウを持つNPOなど支援団体と学校の連携について「どういうNPO法人と連携すればいいのか、自治体にとっても見極めが難しい。文科省が信用できるNPO法人を認定することも検討したい」と述べ、学校とNPOとの連携強化に取り組む姿勢を見せた。
永岡文科相は7月3日に、埼玉県戸田市の市立笹目東小学校(片岡昭博校長、児童624人)を訪れ、学校生活に不安や困難を感じている児童を支援する校内のサポートルーム「ぱれっとルーム」や、認定NPO法人カタリバと提携して「メタバース登校」を提供する「シェア型」オンライン教育支援センター「room-K」を視察。不登校対策を担当する教員や専門スタッフ、支援するカタリバ関係者らと車座で意見交換を行った。
一夜明けた7月4日、永岡文科相は視察の内容を振り返り、「不登校または不登校傾向の子供たちと学校の教員が真摯(しんし)に向き合っており、大変感動した。教室だけではなく、校内サポートルーム『ぱれっとルーム』にも、子供たちに相当気配りや目配りができる指導員を置いており、子供たちと心の中を話し合いながら、しっかりと対応しようとしている姿は大きかった」と述べ、笹目東小学校のぱれっとルームを校内教育支援センターが実際に機能している好事例として高く評価した。
こうした積極的な不登校対策の全国展開について、「いま各都道府県に1校の不登校特例校の設置を求めているが、やはり相当お金もかかるし、人材も必要になる。それを思うと、各校に1教室、空き教室を使って校内サポートルームを立ち上げ、教室に居られなくなった子供を引き取って、少し休憩の時間を提供し、子供が納得して教室に帰れるような、そういうサポートをしてもらえれば、非常に大きな効果がある」と述べ、全国の学校で校内教育支援センターの設置を促進する必要性を説明した。
校内教育支援センターを巡っては、文科省は今年3月31日付の通知の中で、「自分で学級に入りづらい児童生徒については、学校内に落ち着いた空間の中で自分に合ったペースで学習・生活できる環境があれば、学習の遅れやそれに基づく不安も解消され、早期に学習や進学に関する意欲を回復しやすい効果が期待される」として、空き教室などを活用した設置を求めている。
また、NPOなど支援団体との連携に関わる課題として、永岡文科相は「学校がNPO法人と連携したいと思っても、どういうようなNPO法人と連携したらいいのかを見極めるのは大変難しい。それぞれの各県や市であっても(見極めは)難しいと思う。文科省としてもその見極めは考えなければいけないところだ。難しいことはいろいろあるが、文科省が信用できるNPO法人を認定することも検討したいと本当に思っている」と述べ、NPO法人との連携を考えるときに学校の選択をサポートできる仕組みの構築が必要との認識を示した。
文科省では「学校と外部団体との連携を促進する仕組みが必要だと認識しているが、教育関連の外部団体といっても、非常に数が多く、さまざまな団体がある。現状では、その実態の把握もできていない。このため、いまできることとしては、各自治体の学校設置者が外部団体と何らかの契約をするときに、相手先の力量や実績、組織運営の実態などをきちんと確認してもらう、ということになる」(初等中等教育局児童生徒課)と話している。