グーグル・フォー・エデュケーションは7月5日に「教育の未来白書」を日本で公開し、同日、アジア各国の教育関係者や報道関係者に向けたイベントを開いた。今回の白書ではこれからの日本の教育に関する論点として、児童生徒に関するデータの活用、デジタル技術による教員の業務支援、仮想学習環境の活用などを盛り込んだ。同社で行政・教育関係事業を担当するクリス・ハート氏は、AI時代の教員の役割を聞かれ、「AIが教員に取って代わることはなく、教員の人間性こそが、子供たちの学習や人格形成の鍵となる」と強調した。
東京都渋谷区の同社で講演するハート氏
英国やオーストラリアで17年の教員経験があるというハート氏はイベントでの基調講演の中で、「決められたカリキュラムの中でも、デジタル技術を活用することで、学びへのアクセスや学ぶペース、フィードバックの受け取り方に主体性が生まれる」と、個別最適な学びにおけるICTの意義を強調した。
その上で「子供にはそれぞれ異なるニーズがある。かつては個別化された学習計画を作ろうと何時間も費やしてきたが、それでも一人一人に合わせるのは至難の業だった。だが、GIGAスクール構想で日本の状況は大きく変わった。個別のニーズに応えられるようになっただけでなく、そのための教員の負担も大きく減った」と評価した。
また、記者からAI時代の教員の役割を問われると、「教員は今後の社会を担う若い世代を育て、支援する役割を担う、社会にとって最も重要な存在だ。ただ教員の仕事は膨大で、増え続けているという状況が世界中で見られている。AIを活用すれば、教員の業務負担を減らし、よりよく教えることが可能になると思う。AIが教員に取って代わることはない。教員の人間性こそが、子供たちの学びにおいて鍵を握る部分となり、学習だけでなく、人格形成の面でも重要になるだろう」と答えた。
また今月4日に文科省から生成AIの学校現場での活用に関するガイドラインが出されたことについて、グーグル・フォー・エデュケーション・アジア太平洋地域マーケティング統括部長のスチュアート・ミラー氏は「(AI活用を)注意深く(進める)という、グーグルのアプローチと大変似た方向性を示したガイドラインだった」と受け止めを語った。