「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針(仮称)」の策定に向けて議論を進めている、こども家庭審議会の「幼児期までのこどもの育ち部会」は7月10日、第4回会合をオンラインで開き、前回に引き続き、関係団体からヒアリングを行った。関係団体からは、こども家庭庁設立準備室の有識者懇談会が昨年末に取りまとめた論点整理や、こどもを中心に保護者・養育者、こどもに直接関わる立場の人だけでなく、地域社会や社会全体で、その考え方を共有する「こどもまんなかチャート」について意見が寄せられ、中でも幼児期から学童期にかけての幼保小連携に関して、学校との指針の共有の必要性や幼稚園・保育所と小学校のギャップの問題などを指摘する声が相次いだ。
この日の会合では▽全国認定こども園連絡協議会▽全国認定こども園協会▽全国保育サービス協会▽全国保育協議会▽全国私立保育連盟▽全国児童養護施設協議会▽全日本私立幼稚園連合会▽全国国公立幼稚園こども園長会▽子育てひろば全国連絡協議会――の各団体から、同指針の方向性に関する意見を聴取した。
特に幼保小の連携に関しては、保育士の立場で説明した全国保育協議会の村松幹子副会長は、3歳ごろから幼児期の終わりの時期の「こどもまんなかチャート」について言及。「このチャートはその後の育ちにおいても言及していくことが必要だと思っている。つまり、こどもの生活や発達は連続しているということだ。幼児期までのこどもは生涯にわたる生きる基礎を培う大切なときにある。幼児期に得た力をさらに育てながら、その後の大人になってからの生き方を模索していくと思っている。そこで、架け橋期のプログラムを共有していく立場として学校や、学校の先生たちにもこのチャートの中に参加していってほしい」と、小学校と共有していく重要性を強調した。
全国私立保育連盟の丸山純常務理事は現行の幼稚園教育要領や保育所保育指針などに基づき、保育の現場では行事の内容を保育者が決めるのではなく、こども同士の話し合いを通して決めていくなど、こどもの主体性を尊重する実践が広がっていることを紹介。その一方で「こどもたちを小学校に送ると、なかなかそうなっていない現実を4月、5月になると目にする。(例えば)一斉にこどもたちが動く運動会の予定が組まれている。そういうところで保育施設と小学校で齟齬(そご)と戸惑いが生じているのではないか」と、小学校の実践とギャップが生じている点に懸念を示した。
また、全国認定こども園協会の王寺直子代表理事からは「幼保小架け橋プログラムの拡充に向けて、現在モデル事業が展開されているが、教育という視点だけでなく、幼児期と小学校以降をつなぐ福祉的な接続については議論が十分になされていないように思われる」という意見もあった。
こうした報告を受けて、明和政子委員(京都大学大学院教育学研究科教授)は「保育園で育ったこどもたちが小学校に上がったときに笑顔が消えていくというのは、大げさなことではないと思った。学級の中でじっと座っていなければならないという時空間にさらされたときに、いかに心身にストレスを抱えるかを非常に強く思う」と、自身の子育て経験も交えながら指摘。
「小学校でこれからGIGAスクール構想やICT教育など個別最適な学びを、個性に応じてオンラインでの時空間の中で学ぶ選択肢も出てくる。こどもたちにとってのリアル空間での集団生活は一体何のためにあるのかということを再考する時代を迎えている。脳科学者として知育ではなく感性の部分は集団の中で育つものだと強く思っている。そうなると、文科省の管轄だと思うが、小学校の6年間の流れの中で、この時期に何を集団で育めるのかというのをエビデンスベースドで再考していくことが重要ではないか」と、小学校での学びの在り方に踏み込んだ。