コロナ禍が5歳時点の発達に影響 平均で約4カ月の遅れ

コロナ禍が5歳時点の発達に影響 平均で約4カ月の遅れ
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 コロナ禍の影響によって、5歳児の発達が平均で約4カ月遅れていることが、京都大学、筑波大学、慶應義塾大学、東京財団との共同研究による追跡調査で明らかとなった。この研究成果は7月11日に、米国医学会が発行する小児科分野の学術雑誌『JAMA Pediatrics』にオンラインで掲載された。

 佐藤豪竜京都大学大学院医学研究科助教、深井太洋筑波大学助教、藤澤啓子慶應義塾大学教授、中室牧子同学教授からなる研究グループは、東京財団政策研究所と共同で、首都圏のある自治体内の全認可保育所に通う1~3歳887人に対し、コロナ禍が始まる前の2017~19年と、コロナ禍での21年の2回、追跡調査を実施。追跡期間中にコロナ禍を経験した群とそうでない群の間で、3歳または5歳の時点での発達を比較した。乳幼児の発達は、乳幼児の自然な行動全般から発達を捉えることのできる標準化された検査である「KIDS 乳幼児発達スケール」を用いて、保育士が客観的に評価を行い、分析では、子どもの月齢、性別、1回目調査時の発達、保育所の保育の質、保護者の精神状態、出生時体重、家族構成、世帯所得、登園日数などの影響を考慮した。

 その結果、5歳時点でコロナ禍を経験した群はそうでない群と比べて、平均して4.39カ月の発達の遅れが確認できた。「KIDS乳幼児発達スケール」の領域ごとにみると、運動領域では4.99カ月、言語表出領域では5.64カ月、しつけ領域では5.69カ月、対成人社会性領域では6.41カ月の発達の遅れがみられるなどした。

追跡調査で明らかとなった3歳、5歳の時点でのコロナ禍の影響(京都大学提供)

 一方で、3歳の時点では明確な発達の遅れはみられず、むしろ運動領域は1.59カ月、操作領域は2.54カ月、概念領域は3.79カ月、対成人社会性領域で3.00カ月、発達が進んでいることなどが分かった。

 さらに、3歳、5歳共に発達の個人差・施設差が拡大していることや保護者が精神的な不調を抱えている家庭の子は、コロナ禍で5歳の時点での発達の遅れが顕著であることなどが示された。

 研究グループでは、3歳時点でいくつかの領域の発達が進んだ理由の一つとして、コロナ禍で保護者の在宅勤務が増えたことで、子どもと密に接する時間が増えたことが影響しているとみている。その一方で他者との交流が重要になる5歳児の場合は、保護者以外の大人や他の子どもと触れ合う機会がコロナ禍で制限されたことが、負の影響をもたらした可能性があるとしている。

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