「こどもの居場所づくりに関する指針(仮称)」の策定に向けて議論しているこども家庭審議会の「こどもの居場所部会」は7月14日、第4回会合をオンラインで開き、前回に引き続き、こどもの居場所づくりに取り組む団体や自治体からヒアリングを行った。同部会では次回、こども・若者から直接意見を聞くことを予定しており、委員からは、学校の居場所の機能についてもこどもたちから聞くべきだという意見も出た。
この日の会合では▽全国児童発達支援協議会▽サンカクシャ▽あすのば▽アフターケア事業全国ネットワークえんじゅ▽大阪府豊中市――が、それぞれのこどもの居場所づくりの展開を報告。
大阪府豊中市では、2020年度から「子どもの居場所ネットワーク事業」を本格実施し、市内のこどもの居場所が紹介されているポータルサイトの開設や居場所の立ち上げ・運営支援などを展開している。報告を行った市の担当者は「学校の方から課題のあるこどもを居場所に案内してもらったり、協力してもらったりしている。多様なこどもを受け止めるには多様な居場所があり、そういうのを支援する中間支援が必要だ」と説明した。
障害児通所支援事業の団体で構成される全国児童発達支援協議会は、障害のあるこどもにとっての放課後等デイサービスの第三の社会的居場所としての機能を①育成支援②発達支援③セーフティーネット――の3つに整理。特に③については、障害児は虐待を受けることが多いこと、不登校のこどもを1人以上受け入れている事業所がすでに24.8%あることなどに触れた。
同協議会の酒井康年事務局長は「インクルージョンの推進が叫ばれている中、障害児のみを対象としている放課後等デイサービスの存在意義があることも強調しておきたい。まだまだこども主体の利用実態になっていないことや障害のないこどもとの交流の確保、大人主導からこどもの意見が十分に反映される活動への転換などが課題と考えている」と指摘。地域との連携では「何よりも学校との連携が欠かせない。こどもや保護者の同意を得て担任の先生と情報の共有を図ったり、ケース会議の参加、行事の相互作用などを行ったりしている」と話した。
都内で15~25歳の若者を伴走支援し、仕事や住まいのサポートをしているサンカクシャの荒井佑介代表理事は、オンラインゲームを通じて困難を抱える若者とつながる取り組みを紹介。そのきっかけを荒井代表理事は「シェアハウスで若者たちがずっとゲームをしていて、私もはまったから。一緒にゲームをやっていると『実は仕事をしたいんだ』『ちょっと困っている』とこぼす瞬間がたくさんあって、何か一緒に作業をしながら同じ時間を共にできるのが、オンラインゲームの良さ」と振り返る。荒井代表理事がオンラインゲームの動画配信をするVチューバ―となり、こうした若者からの相談に乗るようにしたことで、実際に住まいの提供などに結び付いた事例も多くあるという。
荒井代表理事は「取り組みをやる中で、『支援』や『相談』の看板を掲げているとつながれない若者がたくさんいることと、全然接点はないけれど困っている若者がたくさんいるということをすごく感じた。ゲームのコミュニティもそうだが、他のコミュニティにも、若者のオンラインの居場所がすでに存在していて、そこに困っている子が集結していることは分かったので、どうやったらこの子たちにリーチできるのかをずっと試行錯誤している」と、手応えと課題を語った。
同部会では、7月末に行われる次回会合で、7歳から30歳くらいまでのさまざまなこども・若者を集め、どのような場を居場所と感じ、そこに何を求めているかなどをヒアリングする。ヒアリング内容に関して、安部芳絵委員(工学院大学教育推進機構教授)は「この部会全体を通じてずっと思っていることでもあるのだが、学校について聞かなくていいのだろうか。つまり、学校がどう変わってほしいのか、こどもたちはいろいろ考えているのではないか。設問の数が多くなってしまうかもしれないが、学校について検討してはどうか」と、学校がこどもにとってどんな居場所になってほしいかを聞く必要性を提案。
これに対し今村久美委員(カタリバ代表理事)も「勧告権を持っているこども家庭庁だからこそ、学校が居場所としての機能を兼ねるべきではないかと提案することも、この部会の役割ではないか。その意味でも、学校を捉え直すというのは重要なテーマだと思う」と賛同した。