教職員による児童生徒への性暴力 初動対応を都内全公立校で訓練

教職員による児童生徒への性暴力 初動対応を都内全公立校で訓練
ロールプレー形式の初動対応訓練に取り組む谷中小の教職員
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 教職員による児童生徒への性暴力を防止するために、東京都教育委員会では今年度から全公立校において、性暴力事案が発生した場合の初動対応訓練を実施する。7月20日には台東区立谷中小学校(増嶋広曜校長、児童348人)で、教職員による性暴力が疑われる架空の事例を設定したロールプレー形式の校内研修が行われ、教職員は被害児童の気持ちを具体的にイメージしたほか、初動で求められる適切な対応や配慮のポイントを確認するなどした。

 東京都の2021年度の服務事故において懲戒処分になった54件のうち、「性犯罪・性暴力等」は全体の約4分の1を占める15件だった。都教委によると、こうした事案はコロナ禍を除いて横ばい傾向だといい、教育庁人事部の加野哲朗教職員服務担当課長は「性暴力については、児童生徒が相談するまでのハードルが高く、発見しづらい。早期発見、早期対応のためにも、教職員の感度を高める必要があり、今年度からロールプレー形式の初動対応訓練などを実施することにした」と意図を説明する。

 この日が1学期の終業式だった同校では、午後に校内研修として初動対応訓練を行った。冒頭、増嶋校長は教職員などによる児童生徒への性暴力などの服務事故が発生する際は、▽2人きりの状況▽誤った認識▽優位な立場を利用━━の特徴があると説明。「近年はSNSなどでの服務事故も増えている。子どもと1対1のSNSやメールも、2人きりの状況だと言える」と注意を促し、「あまり身近に感じていないかもしれないが、自分事と捉えて研修に取り組んでほしい」と訴え掛けた。

 今回、設定されたロールプレーのシチュエーションは、

  • ある日の放課後、5年2組の児童Aさんが、5年1組の教室で1組担任X先生が1組女子児童Bさんと2人きりになり、Bさんを膝の上に乗せて密着している場面をたまたま目撃する。
  • その際、AさんはX先生から「今見たことは誰にも言ってはいけない」と言われる。
  • しかしAさんは目撃したことを2組担任Y先生に相談し、Y先生はその後すぐに校長に報告。
  • 校長がBさんの聞き取りを行う教員を決め、事実確認を行う。

というもの。

 教職員らは、5~6人ずつのグループに分かれ、「Y先生がAさんの相談を受け、Y先生が校長に報告する場面」と「学年主任などの先生がBさん(被害児童)から聞き取る場面」について、シナリオに沿ってそれぞれの役になりロールプレーを行った。

 ロールプレー後、教職員からは「目撃して相談してきてくれたAさんに対しても、被害を受けたBさんに対しても、教職員がはっきりと『あなたたちを守る』と言うことは重要だと思った」「ゆっくりと落ち着いて教職員が話を聞くこと、ちゃんと聞いているよという姿勢を見せることが大切ではないか」といった感想が出ていた。また、「内容も内容なので、児童は話しているのもつらいだろう。児童が事実を簡潔に答えられるよう、具体的に質問することが大事だと思った」との意見には、多くの教職員がうなずいていた。

 その他にも「もし、実際に自校でこうした事態が起きた場合は、児童への細心の配慮が必要だと感じた。また、事実確認を早く正確に行っていく必要がある」「自校でこのような事態が起きないために、教職員がストレスをためないことも重要なのではないか。職員室での関係づくりも大切にしていきたい」などと、活発な意見が交わされた。

 増嶋校長は「実際に起きてしまうと、加害教員だけでなく、学校全体の信頼が崩れ、通常の学校生活が送れなくなる。子どもたちの様子をしっかりと見ていくこと、そして子どもたちから信頼していいんだと思ってもらえるよう、全員で取り組んでいこう」と締めくくった。

 都では毎年7・8月を服務事故防止月間(前期)と定めている。22年度と23年度は「児童生徒性暴力の防止」が重点テーマで、都内全公立学校で同様の校内研修を実施する。校種の実態に合うよう、中学・高校では「部活動」や「進路相談」の事例でのロールプレーを想定している。その他、児童生徒向けのポスター掲示や、相談シートの配布、教職員向けに「3ない運動プラス(さわらない、送らない、二人きりにならない、児童生徒との交際が成立しない)」を推進し、管理職面談も実施するとしている。

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