こどもの性被害「生命の安全教育」を全国展開 政府が緊急対策

こどもの性被害「生命の安全教育」を全国展開 政府が緊急対策
こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージを取りまとめた合同会議
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 こども・若者を狙った性犯罪や性暴力の対策強化について検討してきた政府の2つの関係府省会議の合同会議は7月26日、合同会議としては4回目となる会合を内閣府で開き、学校などで性被害防止などを教える「生命(いのち)の安全教育」の全国展開などを盛り込んだ「こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ」を取りまとめた。男性・男児に対する性暴力被害が社会問題となっていることを踏まえ、9月中をめどに「男性・男児のための被害者ホットライン」を新設する。

 有識者や自治体、被害当事者などへのヒアリングを踏まえて取りまとめられた緊急対策パッケージでは▽こども・若者の未熟さ・立場の弱さを利用した性加害が繰り返されている▽こどもが長く過ごす場での性被害の未然防止・早期発見が必要▽こどもは、被害にあっても性被害と認識できず、どう対応すればよいか分からず、保護者も、こどもの被害に気付くことや適切な対応が難しい▽男性への相談支援の知見が十分に蓄積されておらず、相談もしにくい▽文化芸術分野で活動する際、契約関係の明確化や安心・安全な環境が必要――を解決すべき課題として設定。「加害を防ぐ」「相談・被害申告をしやすく」「被害者支援」の3つの観点から強化策をまとめた。

 加害を防止する強化策としては、先の通常国会で成立した刑法改正で、性交同意年齢が13歳未満から16歳未満に引き上げられたことや、16歳未満の若年者に対し、わいせつ目的で不当な手段を用いて面会を要求することへの処罰などを受け、親族や師弟の関係など、被害者に対する加害者の影響力を悪用した性犯罪の取り締まりも強化。性交同意年齢の知識についての中高生向け啓発資料も作成する。

 さらに、こどもに関わる職業に就く際に性犯罪歴がないことを証明する「日本版DBS(Disclosure and Barring Service)」の導入に向け、早期の法案提出を目指し、こども家庭庁などでの検討を加速。これまで児童養護施設などでは義務化されていた施設内での虐待発見時の通報について、児童福祉法を改正し、保育所などでも同様の仕組みを設けることを検討する。

 相談をしやすくする観点では、学校で性被害防止などを教える「生命の安全教育」を全国展開し、未就学児や小学生を中心に、プライベートゾーンを分かりやすく伝えるキャンペーン活動を実施していく。保護者がこどもの性被害に気付きやすくするために、性被害のサインや相談先などについて解説した資料を作成し、学校や保育所、子育て支援の場などで啓発をしていくことも盛り込んだ。

 被害者支援では、学校でこどもから相談を受けた際の教職員の対応について、ポイントを周知。男性・男児への性被害や文化芸術分野で活動するこども・若者の安心・安全について社会的関心が高まっていることを受けて、「男性・男児のための性暴力被害者ホットライン」を9月中をめどに初めて開設し、相談対応と支援に向けた知見の蓄積に乗り出すほか、文化芸術分野で、契約やハラスメントなどのトラブルに対し、弁護士による助言や関係機関の紹介などをする相談窓口も設置する。

 政府は8~9月を緊急啓発期間と位置付け、改正刑法の周知や相談窓口の案内、第三者が被害に気付いたときの対応、二次被害防止の呼び掛けなどを行うとともに、今後も継続的に被害当事者や支援者の意見を聴取するなどして、被害実態の把握と実証的な政策立案につなげる考え。

 緊急対策パッケージの決定を受けて、議長である小倉将信こども政策担当相は「年齢や性別にかかわらず、また、どのような状況に置かれたこども・若者であっても性被害に遭うことは決してあってはならない。全てのこども・若者が安心して過ごせることができる社会を実現するためには、対策を取りまとめるだけではなくて、まさにこれを実行していくことこそが重要だ」と強調。「具体的な取り組みについては速やかに、かつ、着実に実行していただくようお願いしたい。また、パッケージの中で施策の方向性を示したものについては、さらなる具体化のための検討を深めていただきたい」と要請した。

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