こども・若者のライフステージごとに盛り込むべき「こども大綱」の基本施策について検討してきたこども家庭審議会の基本政策部会は7月25日、第5回会合を開き、青年期と各ライフステージに共通する事項について議論を行った。青年期では大学生の就職の在り方や奨学金制度の拡充などを求める意見が複数の委員から出たほか、各ライフステージに共通する事項ではCRE(子どもの権利を大切にする教育、Child Rights Education)を明確に位置付けることを提案する声があった。また、前回の議論を踏まえ、こども家庭庁からは縦断的な施策を最初に記載した上で、各ライフステージの施策を整理した大綱の新たな構成案が示され、それを基に大綱案の起草を行うことが確認された。
これまでの議論では、こども家庭庁が設置されるよりも前に政府内で検討されていた「こども政策の推進に係る有識者会議」の報告書をベースにこども大綱の構成は①幼児期まで②学童期③思春期④青年期⑤各ライフステージに共通する事項等――と、こども・若者のライフステージに沿った整理を行うこととしていたが、複数の委員から各ライフステージに共通する施策を先に書くべきだとの提案があり、この日の会合で示された新たな構成案では、まず縦断的な施策として全てのこども・若者に関する施策や虐待・貧困などの課題に対する施策を記載し、「幼児期まで」「学童期」「思春期」「青年期」とライフステージに関連した施策を整理。加えて、保護者の施策として「子育て家庭への支援」を位置付けることとされ、これを基にいったん9月までに大綱案を起草する方針が了承された。
前回会合は従来の構成案に基づき、「幼児期まで」「学童期」「思春期」を検討したことから、これに続き今回は「青年期」と「各ライフステージに共通する事項等」を中心に議論が行われた。
「青年期」では、大学生の原田伊織委員(兵庫県尼崎市ユースカウンシル事業Up to You! 第1期代表)が「学生の多くは奨学金の課題を持っているのにその記載が少ない。大学教育に関わるお金のことについても方針を立てる必要がある」と指摘するなど、奨学金の拡充をはじめとする高等教育の負担軽減を求める意見が複数の委員から出た。
就職活動については、委員の間で異なる意見が示された。太田聰一委員(慶應義塾大学経済学部教授)が「賃上げがやや強い印象だ。確かに若い人の給与水準を上げるのは重要なポイントではあるが、その前段階で、実際にスムーズに教育から職業に移行できるかが重要だと思う。ある程度理念として掲げてもいいのではないか」と述べるなど、就職活動への支援を求める声があった。一方で、土肥潤也委員(わかもののまち代表理事)が「就職活動のための大学生活になっているのが問題なのではないかと感じている。むしろ大学生であっても青年期の若者たちが就職だけではなく遊んだり、人生の余白を見つけていったり、より良い人生を送るという視点が抜けているのではないか」と疑問を投げ掛けるなど、就職活動が重視され過ぎることによる影響を懸念する声もあった。
「各ライフステージに共通する事項等」では、木田秋津委員(小林・福井法律事務所弁護士)が「子どもの権利教育の視点がまったく書かれていないことを懸念している。こどもが権利主体であることをいくら掲げても、こども自身がそのことを認識できなければいけない。学校教育をはじめ、あらゆる学習の場でこども自身が子どもの権利を学ぶ機会の保障をするべきだ」と、CREを位置付けることを提案。こどもの貧困対策や体験活動の促進などに関する意見もあった。