特定分野に特異な才能があり、それ故に学校での生きづらさを抱える児童生徒や、才能と発達障害を併せ持つ児童生徒の支援に向け、研究者・学校関係者・保護者などの関係者でつくる研究会が7月29日、神戸大学でキックオフミーティングを開いた。教員、保護者、学生などが集まり、それぞれが立場を超えて支援への理解を深めた。研究会を立ち上げた神戸大学の藤修特命准教授は「保護者と学校をどう結び付け、連携を作り、支援できるかを考えたい」と意気込みを語った。
キックオフミーティングでは、今回立ち上がった研究会の代表を務める神戸大学大学院のラッシラ・エルッキ助教、研究会メンバーで教員経験もある神戸常盤大学の田中達也講師が、文科省の有識者会議が取りまとめた方向性や、早修・拡充・2E教育といった才能教育の類型、諸外国の状況などについて講演。教員と保護者がそれぞれの立場から、現在の困りごとや、期待する支援を語り合う場面もあった。
研究会では今後、才能と発達障害を併せ持つ「2E(Twice-Exceptional)」の子供たちへの支援を中心に、▽講義や意見交換を含む研修▽学校と保護者が共に子供の特性を理解し、支援を考えるために記入する「サポートブック」の活用▽学生メンターの認定制度と教員養成課程での教師教育プログラム作成▽メタバースを活用した居場所作り――といった取り組みを検討しており、将来的には学校現場での実践につなげたいとしている。
藤特命准教授は生物教育が専門で、小中学生の科学プログラムなどを通じて特異な才能のある子供たちと関わってきた。「文科省の有識者会議で審議まとめが出され、『日本でもやっと始まる』という思いだ。これまで才能教育は、エリート教育や早期教育と混同され、ネガティブに捉えられることもあったが、今回の審議まとめによって理解が得られやすくなった。今ある状況の中で何ができるのかを考え、学校での支援を一緒に作っていきたい」と述べた。
研究会の立ち上げに協力した、特異な才能のある子供たちの保護者などでつくるギフテッド応援隊の冨吉恵子代表理事は「この研究会に出合ったことで(支援の)点と点がつながって線になったと感じ、ものすごく希望になっている。学校の先生たちも忙しいと思うが、個性や意見を尊重して、子供たち一人一人と、一人の人間として関わってほしい」と期待を語った。
文科省の有識者会議が昨年9月に公表した審議の取りまとめでは、特異な才能のある子供だけを選抜して特別なプログラムを提供するのではなく、多様性の一つとして認めつつ、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実の一環として、支援に取り組む方向性が明記された。それを受け文科省の今年度予算では、特異な才能のある児童生徒の支援に向けた実証研究などが盛り込まれている。