若い世代の社会参画に取り組む日本若者協議会は8月1~2日に、東京都千代田区の衆議院第二議員会館で、小学3年生から中学3年生を対象にした「こども国会2023」を開いた。参加者は、防災、ジェンダー、教育の3つのテーマについて、専門家や国会議員と意見交換し、グループに分かれて提言を行った。教育をテーマにしたグループからは「現在の40人近いクラスは人数が多過ぎる。少ない方が先生に見てもらえる時間が増える。しかし現状は、新たな教室をつくったり、先生を配置したりすることは難しそう」といった切実な声も聞かれた。
2021年に始まり、今回で3回目となるこども国会。コロナ禍の影響でこれまではオンラインだったが、今回初めてリアルで開催。約100人のこどもたちが集まった。3つのテーマについて専門家や与野党の国会議員らから説明を受けたり、質疑応答を行ったりした1日目を踏まえ、2日目はグループに分かれて提言を練った。
防災のテーマで、過ごしやすい避難所づくりに着目したグループは「避難所に避難しても、ご飯がすぐに配られなかった。熊本地震では2カ月が過ぎても配られた食事は朝ごはんにおにぎり1個、昼はパン2個とジュース、夕食は弁当と、十分とは言えない状態だった」と、調べたことを報告。この問題を解決するため、キッチンカーがすぐに来て温かい食事を提供することなどを提案した。
発表に耳を傾けていた自民党の鈴木貴子衆院議員は、災害関連死をゼロにする必要性を挙げた上で「避難所がどういう場所になるかというと、皆さんが通っている学校だ。学校のことを一番よく知っているのは誰だろうか。それは皆さんだ。学校で学年に応じた防災教育や避難所運営について、実際に起きたときに誰がどうやって役割分担を決めるのか、どういうところに配慮しないといけないかなどを考えてもらえたら、皆さんは支援される側ではなく、支援する側になれる」と背中を押した。
教育では、不登校や校則、成績、授業など、多様なテーマで発表が行われた。
不登校を取り上げたグループは、不登校の子がフリースクールなどの学校以外の居場所で学んだ場合の出欠の扱いや、スクールカウンセラーの運用が学校や自治体によって異なっていると指摘。さらに「いろんな背景があって学校には行きたくないけれど勉強はしたい。フリースクールに行きたいけれどそのお金がなく、仕方なく家で1人で勉強しなければいけない状況下にあるこどももいる」と、フリースクールの学費などを支援する仕組みが必要だと訴えた。
この提案について立憲民主党の馬場雄基衆院議員は「フリースクールに通えるように整えていくことは絶対に必要だと、皆さんの気持ちを聞いてすごく感じた。現実的に経済的な理由だけで動けない人がいるのもそうだが、そうじゃない中で通えていない人もいるのではないか。フリースクールに通えていない人に財政的な支援も含め、どんなアプローチが必要か、真剣に考えていきたい」と応じた。
また、学年制を緩和して、レベル別の学級編制ができるようにすべきだと思い切った提案をした別のグループからは「現在の40人近いクラスは人数が多過ぎる。少ない方が先生に見てもらえる時間が増える。しかし現状は、新たな教室をつくったり、先生を配置したりすることは難しそうなので、もっと対応してほしい」という声もあった。
参加した小学5年生の黄一諾(こう・いの)さんは「私はジェンダーで男女平等の問題を議論したけれど、いろんな意見が出て、結果的に実行するのが大事だという結論に至った。こういうイベントじゃなくても普通の生活の中で、友達や家族、先生と、たとえ意見が違っても議論して得られるものはたくさんあると思う。これからも議論していきたい」と、議論していくことの大切さを実感していた。
中学3年生の奥田将吾さんは「政治に興味があって、友達に誘われたこともあり参加した。日本の政治はこうやって議論しながら決めていくのだなと感じた。年齢も学校も違うこどもと議論してみて楽しかった。小学生からは、中学生では思い付かない意見も出た。こどもや国会議員が聞きながら反応してくれたので、ちゃんと伝わったなと思った」と感想を話した。
日本若者協議会の室橋祐貴代表理事は「小中学生の段階からこうした主権者教育をやっていく必要がある。今回初めてリアルでやったが、発表の後もこどもたちが国会議員と対話できるなど、リアルならではの良さがあった。一方で遠方のこどもはどうしても交通費などの問題で参加しにくい。地方ほどこうした機会が少ないので、この点は課題だ」と振り返った。