日本に住む在留外国人が初めて300万人を超え、日本語教育のニーズが高まる中、全国の20政令市で作る指定都市市長会は、外国人に日本語教育を提供する体制の構築にあたり、「国の責任において、必要な経費を全額国費で措置すること」を求める要請書をまとめ、千葉市の神谷俊一市長が8月3日、文科省の伊藤孝江政務官に手渡した。要請書では、日本語指導が必要な児童生徒に対する学校の指導・支援体制を充実させるため、日本語指導担当教員の定数を拡充し、現在、加配定数で行っている配置を基礎定数化するとともに、配当基準を改善するよう求めた。
出入国在留管理庁によると、2022年末現在で中長期在留者と特別永住者を合わせた在留外国人数は307万5213人となり、21年末に比べて31万4578人増加して初めて300万人を超え、過去最高を更新した。日本語教育の需要が高まる中、22年11月に文化庁の文化審機会国語分科会の報告で、自治体に対して、在留外国人に自立した言語使用者とされるB1レベルまでの日本語を提供することを求めた。23年5月には日本語教育機関認定法が国会で成立、日本語教育機関の認定制度と日本語教育の教員資格制度が来年4月に創設される。
こうした状況の下、要請書では、「地域においては実情に応じて日本語教育を推進しているが、その役割は主にボランティアが担っているのが現状。教育を提供する専門人材が圧倒的に不足しているだけでなく、国が求める日本語教育を提供するためには多大な費用を要すると見込まれる。また、学校においても、日本語指導が必要な児童生徒に対して特別の教育課程を編成、実施して対応している現状である」と説明。
その上で、外国人人口の増加に対応するために、国に対して「日本語教育の充実について、教育の質を確保するとともに、必要とする外国人への日本語教育の提供体制を構築するため、国の責任において、必要な経費を全額国費で措置すること」を求めた。 また、学校についても「日本語指導が必要な児童生徒の指導・支援体制充実のため、日本語指導担当教員の定数加配措置の充実および基礎定数化、ならびに配当基準の改善を行うこと」とした。
面会後、記者団の取材に応じた神谷市長は「全国の政令市で在留外国人が集中的に増えており、千葉市も含めてトラブルが増えている。(在留外国人に)生活レベルの日本語を身に付けていただくために、体制作りの必要性を感じている。だが、それは自治体だけで負担できるものではない。国としての責任もあると思うので、その役割をしっかり果たしてほしい」と、要請書の内容に理解を求めた。
また、小中学校に外国人の児童生徒が増えている現状に触れ、「千葉市では、全校児童生徒の半数以上が外国籍となっている学校もあり、日本語教室を別途設けて対応している。要するに、外国人が増えている現状に合わせて、地方公共団体が対応せざるを得ない状況になっている。日本全体で見た場合、在留外国人は本当に増えてきているのだから、そろそろ国全体で統一感のあるフレームワークで対応していくことが必要な時期が来ていると思う」と指摘した。