「乗ずる数」の見直し求める 全国知事会、学校の人材確保で提言

「乗ずる数」の見直し求める 全国知事会、学校の人材確保で提言
永岡文科相(右)に提言を手渡す大村知事
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 全国知事会文教・スポーツ常任委員会の大村秀章委員長(愛知県知事)は8月3日、「学校現場の『教員不足』の解決を図ることが急務」として国が取り組むべき政策をまとめた提言を永岡桂子文科相に手渡した。提言では、学校の働き方改革について、義務標準法の「乗ずる数」の見直しを含む教職員定数の改善や、支援スタッフの充実、副校長・教頭や養護教諭の複数配置の拡大など学校現場のマンパワーの拡充を強く求めた。教員のなり手不足については民間企業と連携した人材発掘のほか、教員として一定期間勤務すれば奨学金の返還が免除される制度の構築などを掲げた。

 提言は「学校教育を担う人材の確保に関する取組の充実について」と題され、7月25、26の両日、山梨県北杜市で開かれた全国知事会議で採択された。

 前文では、「近年、教師志望者の減少などにより、臨時的任用教員などの確保ができず、実際に学校に配置されている教師の数(配置数)が、各都道府県・指定都市の教育委員会において学校に配置することとしている教師の数(配当数)を満たしていない、いわゆる 「教員不足」が生じていることが児童生徒の学びに支障をきたすことになりかねない重大な問題となって」いるとして、「『教員不足』の解決を図ることが急務」と危機感を強調した。

 具体的な政策では、教職員定数の改善を巡り、義務標準法の「乗ずる数」の見直しに言及した。義務標準法では、学級を教員配置の算定根拠にしており、1学級に最低1人の教員が配置されるが、学級担任を受け持たずに専科指導や生徒指導などを受け持つ教員を配置するため学級数に1.13以上の係数を乗じて学級数を上回る教員を配置している。この係数が「乗ずる数」になる。この「乗ずる数」を増やせば、学校現場に担任を持たない教員の配置数が増えることになり、例えば、小学校教員1人当たりの授業時数(持ちコマ数)を減らして勤務中の「空き時間」を生み出すことにもつながっていく。

 中教審が取り組んでいる学校・業務が担う業務の適正化については「実効性のある方針」を示すことを求めた。さらに、教員業務支援員をはじめとする支援スタッフの充実、副校長・教頭や養護教諭の複数配置の拡大、外部人材の積極的な活用、部活動の地域連携・地域移行などの項目を挙げた上で、学校における働き方改革について「あらゆる施策と十分な財政措置を講じること」を強く訴えた。

 教員の処遇については「給特法の法制的な枠組みを含めた抜本的な見直し」と、政府が「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太の方針)に沿った要望を行った上で、「地方に負担を転嫁しない制度とすること」と、くぎを刺した。

 志望者の減少を踏まえた教員の人材確保では、「民間企業と連携した人材発掘や入職前後の研修・サポートの充実」「教師として採用され一定期間勤務した場合に奨学金の返還が免除される制度の構築」を挙げた。

 また、教員養成大学・学部と教育委員会の連携や協働により、教員就職率の向上に積極的に取り組んでいく姿勢も強調した。これに関連して、大学入試における「地域枠」 の設定、教員採用選考における特別選考の実施などについて、大学と教育委員会が円滑に連携できるよう、国にも支援を求めた。

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