教員の余裕のなさが苦登校を生む 居場所づくり団体が議論

教員の余裕のなさが苦登校を生む 居場所づくり団体が議論
「こどもまんなか」を考える4象限の図を説明する西川副代表理事(YouTubeで取材)
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 夏休み明けに学校に行くことがしんどいと感じる子どもが増えることを踏まえ、全国各地でさまざまな子どもの居場所づくりに取り組む団体が連携し、特設サイト上で学校や家庭以外の安心できる居場所や相談場所を紹介する「#学校ムリでもここあるよ2023キャンペーン」が8月17日から9月8日まで行われている。8月20日にはオンラインでオープニングイベントが開かれ、4月に発足したこども家庭庁がスローガンとして掲げている「こどもまんなか」をテーマに、子どもの居場所づくりの団体の代表者が、学校には行っているが、学校がつらいと感じている「苦登校」の状態がなぜ生まれるかを議論した。その一因として、居場所づくりの関係者は、学校の教員自身が地域に相談しにくく、余裕を失っていることを挙げた。

 同キャンペーンは2019年から毎年夏休み明けの時期に行われ、フリースクールや子ども食堂、プレーパークなど、全国各地の子どもの居場所の情報を特設サイトで紹介し、生きづらさを感じている子どもたちに、学校や家庭以外にも安心して過ごせる居場所や相談場所があることを伝えている。

 オープニングイベントでは、ハンズオン埼玉の西川正副代表理事、豊島子どもWAKUWAKUネットワークの栗林知絵子理事長、フリースクール全国ネットワークの中村尊代表理事、パノラマの石井正宏理事長が登壇し、子どもの居場所づくりにおいて「こどもまんなか」をどう考えるか、「こどもまんなか」で生きづらさを感じている子どもをどう減らし、寄り添う支援につなげていけるかを話し合った。

 はじめにモデレーターを務める西川副代表理事は、子どもの状態を縦軸に、学校に行く・行かないを横軸にした4象限の図を提示。「これまで横軸を中心とした子ども観を私たちは持っていた。学校に行くことは良いことだとし、そこには必ず評価が含まれている。その評価される目線の中で子どもたちはしんどい思いをしているのではないだろうか。これからの社会を考えるとしたら、縦軸。子どもたちが良い状態にいられるのかどうか、学校に行っていても、行っていなくても良い状態にいられるかどうかということを、私たちは共通の目標にしていく必要がある。それを『こどもまんなか』と言ってはどうか」と問題提起した。

 これに対し、長崎県を拠点にフリースクールなどを運営している中村代表理事は、4象限の図のうち、学校に行っているが、子どもの状態が良くない場合を「苦登校」と表現。「『こどもまんなか』は大人から望まれる状態と望まれない状態の横軸で見るのではなくて、自分の気持ちや心の状態、幸福度が大事ではないかと思う。横軸で子どもを見る、揺さぶるのは『こどもまんなか』ではない。そして、縦軸を上げるのも下げるのも他者の影響が大きい。誰かが寄り添ってくれて、思いを吐き出せることが大事だ。『苦登校』の子たちが追い詰められると、自死を選んでしまう。(夏休み明けに)子どもが休みたいと言えば、『苦登校』の状態になっているのかもしれない。理由を聞かずに『分かった、休もう』と言ってほしい」と保護者や教員に呼び掛けた。

 高校の中で生徒が気軽に立ち寄れる「居場所カフェ」の活動に取り組んでいる石井理事長は「就職する生徒にとって高校は最後の教育機会。その最後のとりでで支援者である私たちが生徒と出会えるのは非常に大きな価値がある。そこで(誰かに頼れる力である)『信頼貯金』をためておけば、25歳になっても30歳になっても、困ったらその残高を使って連絡し続けてくれる。支援のセーフティーネットに引っ掛かり続けることができる」と強調。

 「親でもない、先生でもない大人と出会って、ここではないどこか、今の自分とは違う自分、違う場所、違う環境を想像できたときに一歩を踏み出せるのではないかと思っている。ちなみに、学校の先生は学校に過剰適応している。不登校みたいな不適応を起こしている子たちからするとロールモデルにならない。先生ではない人もいるカラフルな学校にすることで楽しい場になる」と提案した。

 石井理事長の提案に関して、栗林理事長は、親をはじめとする大人も、誰かに相談することをためらわずにできる社会にすべきだとした上で「同じように学校の先生も相談すれば何とかなるという体験がないのかなと思うと、つないだら何とかなったという経験を多くの先生がしてほしい。そのためにも学校と地域が連携できる社会になってほしい」と話した。

 これに石井理事長は「学校は福祉的な機能を強化していかないといけない。ただ勉強をする場だけでなくケアする場になる。ただ、それを先生が負うのではなく、さまざまな民間との協働でできるようになればいい。先生こそ救われてほしいと思っている」と、学校現場が抱えている負担の大きさにも理解を示した。

 西川副代表理事は「先生の余裕のなさが『苦登校』の子どもを生んでいる。これが根本的な問題なのかもしれない」と応じた。

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