外遊びが近視予防に 為末大さんと日本眼科医会会長が対談

外遊びが近視予防に 為末大さんと日本眼科医会会長が対談
子どもの外遊びの意義を語り合う為末さん(左)と白根会長
【協賛企画】
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 子どもの外遊びは近視の予防に効果があるとして、子どもの発達に関する研究者や企業・団体で構成する「子どもの健全な成長のための外あそびを推進する会」はこのほど、同会のメンバーで、男子400㍍ハードルの日本記録保持者・オリンピアンの為末大さん(デポルターレ・パートナーズ代表)と、日本眼科医会の白根雅子会長の対談を都内で開いた。為末さんは即興的に自分の思い付いたことを試せる遊びと、ゴールから逆算的に積み上げていくスタイルの学びは相性が悪いと指摘。未来を予測することが難しくなっている時代だからこそ、遊びの要素は学びの中でも大事になっていると語った。白根会長は外遊びによってさまざまな情報が視覚から入ることで、脳の発達に刺激を与えるといった、子どもの発達における遊びの重要性を挙げた。

 同会では、7月末から8月にかけて同会メンバーと眼科医による対談を全5回企画。3回目に設定された為末さんと白根会長の対談では、子どもの成長発達における遊びの意義や子ども・子育て政策まで、幅広くテーマにされた。

 為末さんが「昔と比べていろいろなデジタルデバイスが出てきて、自分の子どももYouTubeを見たりゲームをしたりして、なかなか外で遊ぶこととのバランスが難しい。親も子どもが静かになるので、楽だという面もある」と話を振ると、白根会長は「眼球が大人になるにつれて大きくなる過程で、普通よりも大きくなるのが近視。その近視が進行する要因は世界でも研究されているが、現時点では、1日2時間以上の外遊びをしている子どもたちは有意に近視の進行が抑制されることが分かっている。外遊びの何が有効なのかということについては、まだ定説はないが、例えば日の当たる時間や遠くを見る時間が長いなどの要素が考えられる。2時間以上の外遊びは近視の進行を抑制する。それは将来の目の病気を予防するということになる」と応じた。

 さらに子どもたちにとっての遊びの意義について、為末さんは「計画を立てられないのが遊びの特徴だ。友達がやったことに臨機応変に対応するのが遊びで、シナリオなどがない。遊びは即興的で、自分の思い付いたことを試せる。しかし、学力を高めるための学習は、今思い付いたことをやることと相性が悪い。ゴールが決まっていて、そこから逆算して積み上げていけば成果が出やすいシステムになっている。一方で遊びはゴールがないので、いろいろなことをお互いに乗せ合いながら、どんどん新しいことが生まれてくる世界だ。未来の予測が難しくなればなるほど、この遊びの能力も大事だとされるのではないか」と、学びの中に遊びの要素をうまく取り入れていくことを問題提起。

脳の発達の観点から外遊びの効果を説明する白根会長
脳の発達の観点から外遊びの効果を説明する白根会長

 これに対し白根会長は「子どもの自由な発想は脳のさまざまなメカニズムを発達させる。能力とは脳の発達でもあるので、たくさんのものを見ればいろいろな視覚情報が脳に入って行き、後頭葉で認識され、神経などとつながっていく。目から入ってくるものは脳の発達を促す起爆剤になる。視覚を通した経験が多いほど、脳にとっていい刺激になるのではないか。視覚は屋外の方がいろんなものを見るチャンスがある」と解説。子どもの社会性を育てることのみならず、脳の発達の観点からも外遊びの大切さを強調した。

外遊びを広げる施策として、為末さんは放課後の学校の校庭開放を提案する
外遊びを広げる施策として、為末さんは放課後の学校の校庭開放を提案する

 また、こうした外遊びを促す施策として、為末さんは放課後に学校の校庭を遊び場として開放することを提案。白根会長もうなずき、「子どもたちが外で過ごす時間を長くするためにも、放課後の時間は大事だと思う。校庭で子どもたちだけで遊ばせるわけにもいかないので、見守る大人が必要になるが、学校の先生が見守るのは働き方改革にも逆行してしまうので、地域の人が子どもの見守りをするための研修を受けて、安全に子どもたちが過ごすような環境をつくる。親も子どもが遊ぶ姿を見たいと思うだろう。親の働き方も改革して、放課後に大人が子どもの様子を見られるような、ゆとりのある働き方を推進してほしい」と、大人が子どもと関わる時間をつくるための働き方改革の重要性を挙げた。

 対談の詳細な内容は同会ホームページで近日中に公開される予定。

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