「こどもの居場所づくりに関する指針(仮称)」の策定に向けて議論しているこども家庭審議会の「こどもの居場所部会」は8月23日、第7回会合を開き、同指針の各論点について議論を交わした。委員からは「こどもを居場所につなぐためには、そのハブ役となるスクールソーシャルワーカー(SSW)など専門職を常勤として採用していくことが必要」といった声が上がった。
同部会では、こどもの居場所づくりを進めるにあたっての基本的視点として▽「ふやす」多様で多数のこどもの居場所を整備する▽「つなぐ」こどもが居場所につながる▽「みがく」こどもにとってより良い居場所であり続ける▽「ふりかえる」こどもの居場所づくりを検証する━━と構成し、議論を進めている。
「つなぐ」という視点について、小川杏子委員(特定非営利活動法人パノラマ こども・学校連携事業統括責任者)は「置かれた環境や地域によって、居場所へのアクセシビリティに格差がある」と指摘。また、「こどもたちにとって、知らない場所や知らない人のところに行くというのは、かなりハードルが高い。例えば、ハイティーンの若者は、自分が信頼できている大人を介して居場所につながっていくことが多い。ただ場所があるだけではなく、人とのネットワークの構築など、ソフト面の工夫が必要なのではないか」と意見を述べた。
また友川礼委員(松山東雲女子大学人文科学部准教授)は「こどもたちを居場所につなぐハブ役としてスクールソーシャルワーカーなどが期待されているが、会計年度任用職員などとして採用され、活躍しようにもできない人が多い。場所だけでなく、こうした専門性を持った人を常勤として採用していくなど、雇用条件についても指針の中で方向性を示していく必要があるのではないか」と訴えた。
どのように居場所づくりを検証するのかという「ふりかえる」の視点については、各委員から「非常に難しい」との声が上がった。水野達朗委員(大阪府大東市教育委員会教育長)は、「居場所というのは、個人的で主観的なことであり、それをどう検証していくのか。例えば、居場所の数が何カ所あるからといって、そもそもその数で足りているのかどうなのかは判断しづらい。単純に居場所の数が3つ増えたらいい、ということでもない。検証していくためには、かなり細かい指標がたくさん必要ではないか」と指摘した。
湯浅誠委員(東京大学先端科学技術研究センター特任教授)は、「例えば、1人でおもちゃをいじっているのが安心できる、そこが居場所なんだという子もいる。それを人との関係性の上で、どう評価すればいいのか。否定的、抑圧的な関係から逃れて、自分の居場所を持つこともある。逆に、肯定的、受容的な関係の中に自分の居場所を持つこともある。その両方が生きる上で不可欠な要素だ。どこにも居場所がないという子がいなくなることを目指すとともに、より多くのこどもが、よりたくさんの居場所と感じられる場を持てることが、重要ではないか。いろいろなモニタリングの課題はあると思うが、『社会をつくっていく上で居場所づくりは大事なんだ』ということを、指針では宣言しておきたい」と述べた。