東京都教育委員会は8月24日、第13回定例会を開き、開発を進めている教育ダッシュボードについて報告した。都教委では2022年12月から「教育データ利活用検討委員会」を設置し、教育データの利活用方法や適切な取り扱いについて検討を続けており、来年1月からは都立学校の推進校19校でデータの収集を開始する予定。今後、教育データを集約、可視化し、教員の指導力の向上や施策の充実などにより、子どもたち一人一人の力を最大限伸ばしていくとしている。
教育ダッシュボードとは、児童生徒の成績・出欠席の情報や、授業における端末の利用状況などの「教育データ」を集約・可視化し、分析を行う教員用のシステム。データに基づく指導を実現することで、子どもたち一人一人の力を最大限伸ばしていくことを目的としている。対象校は、都立高校(通信制課程を除く)、都立中学校、都立中等教育学校、都立小学校。
教育ダッシュボードの活用イメージとしては、クラス別の定期考査の成績や、端末を使ったクラス内の話し合い活動の状況などのデータを基に、教員がクラスごとの傾向を把握し指導法を改善するケースや、教科ごとの出欠状況や各教科の課題の提出状況の情報などから、生徒の変化をいち早く察知し、早期発見・早期解決につなげるケースなどを想定している。
都教委では22年12月から「教育データ利活用検討委員会」を設置し、教育データの利活用事例の検討や、個人情報、プライバシー保護の観点から、教育データの利活用方法や適切な取り扱いについて検討を進めてきた。
これまでの議論を基に、8月には「東京都教育ダッシュボードにおける教育データ取り扱い方針」を策定。取り扱う教育データは校務系情報(生徒等の生年月、所在区市町村、出欠席、定期考査点数、科目の評価・評定、所属する委員会、部活動、その他生徒の基礎情報に係るもの)および、学習系情報(学習支援サービスとして利用しているMicrosoft Office365のログ情報)と定めた。
教育データの利用目的は▽生徒等の情報を分析して得られた課題に応じた、生徒等に対する学習指導、進路指導および生活指導の実施▽学校内のクラス等の集団や学校全体の情報を分析して得られた課題に応じた指導方法の検討および学級経営の改善━━としている。また、教育データを基に統計的に加工した情報は、教育施策の立案にも利用する。
教育データは、生徒の卒業後5年間保持するとしており、生徒や保護者がダッシュボードによる教育データの分析を望まない場合、いつでも申し出ることができ、該当生徒のデータを分析対象から除外することも明記されている。
こうした報告に対し、委員からは区市町村の学校にはどのように教育ダッシュボードを広げていくのかとの質問が出た。都教委の担当者は「任命権者が違うため、このシステムをそのまま導入することは現段階では難しいが、取り組んできた内容について情報提供していく」とした。別の委員からは「将来的には区市町村の学校とも連携したり、データ統合したりすることも考え、一意性が失われないような設計をしておくことが肝要ではないか」との指摘も上がった。
さらに別の委員は「教育データを取ることはもちろん、そのデータをどう読み取って、指導に生かすかということが一番大事ではないか。そこはまた教員の負担になるかもしれないが、教員がそういうデータを読み込む力などを育む研修なども必要だ」と意見を述べた。
19校で教育データの収集を開始するが、都教委では段階的に学校数を増やしていくとしており、担当者は「まずはスモールスタートし、教員や専門家などの意見も聞きながら随時アップデートさせていきたい」と話した。