家庭や学校以外にこどもや若者が自分らしくいられる第三の居場所について考えるイベントが8月24日、東京都渋谷区にあるTikTokオフィスで開かれた。イベントはカタリバが協力し、オンラインも合わせて中学生から大学生まで約30人が参加。社会活動家で、子ども食堂への支援活動に取り組む認定NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」の湯浅誠理事長や、「TikTok」をはじめとするSNSのインフルエンサーとして活動する関戸かのんさんの講演を聞き、オンラインの居場所の在り方を話し合った。
世界的な動画投稿プラットフォームである「TikTok」では、2021年から特設ページ「夏のTikTok#悩み相談」を設け、学校や家庭についての悩みや本音を投稿し、子どもや若者の支援に取り組むNPOが動画でアドバイスする活動を展開している。
その一環で開かれたこの日のイベントでは「私たちが"らしく”いられる場所って、どんな場所?」をテーマに、オンラインも含めた第三の居場所の重要性を参加者が話し合った。
湯浅理事長は、子ども食堂ではしばしば、子どもが家庭では見せない力を発揮する場面があることを紹介。その理由を「普段出ない力が出ることを、われわれは居場所の力と呼んでいる。なぜそうなるかというと、誰かが見ていてくれるから。ここがポイントだ。自分が見てもらえていると感じられるかどうかが、居場所かどうかの分かれ目なのだと思っている。私の居場所の定義は、誰かにちゃんと見ていてもらえて、受け止められていて、尊重され、つながっていると本人が感じられる場所。そういう関係性のある場所だ」と説明した。
その上で学校も家庭も含め、どこも居場所になっていること、どの人もどこかに少なくとも一つは居場所があり、その数が多ければ多いほど自己肯定感が高くなると指摘。「居場所がない人がいるのは、世の中に居場所が少ないからだ。居場所がないのは個人の問題や子どもの問題ではない。大人の問題だ。大人たちが社会にたくさん居場所をつくれていれば、子どもだってたくさん居場所のある世の中になる」と強調した。
関戸さんは、中学生のころは家庭に居場所がなく、たまにほめられてもお世辞のように感じてしまい、誰も信じられなかったこと、高校生になってから始めた「TikTok」が、多くの人とつながるきっかけとなり、かけがえのない居場所になったことを振り返り、「今でも私は居場所を探している。居場所はどんどん変化していくものだと思っている。例えば友達が居場所であっても、時がたつにつれてその友達は別の環境に足を踏み出していくだろうし、友達が別に居場所をつくるだろう。私も、TikTokを前ほど自分の居場所だとは感じていない。私のやりたいことがTikTokのおかげで見つかり、やりたいことに共感してくれる人がたくさんできて、TikTokという居場所はやめるわけではないけれど、卒業して、別のところに居心地のよさを感じている」と、今の思いを語った。
参加者は湯浅理事長や関戸さんの話を踏まえ、「私らしさを失うと感じるときは、どんなときか」や「私らしくいられるオンラインのサードプレースには何があるか」をグループに分かれて議論した。都内の高校3年生の桑原寛佳さんは「小学生の居場所づくりのボランティアをしていて、オンラインも居場所になるんだと思って参加した。ボランティア先は私にとっても居場所になっていて、学校や家庭のように『優れよう』としなくていい。今後、自分自身で居場所づくりをやってみたいと思っていて、どんな居場所をつくるか考えていきたい」と感想を話した。