こども大綱の策定に向けて検討しているこども家庭審議会の基本政策部会は8月31日、第7回会合をオンラインで開き、子どもの権利に関する国際社会の動向をテーマに、国連子どもの権利委員会の委員を務める大谷美紀子弁護士が同条約に基づく子どもの権利を保障する施策の考え方について講演した。大谷弁護士は、国の施策は子どもの権利を基盤とするアプローチが重要だと強調した。
国連子どもの権利委員会の委員である大谷弁護士が講演した基本政策部会第7回会合(YouTubeで取材)
日本は1994年に子どもの権利条約に批准し、これまで何度か子どもの権利委員会から日本政府に対し、改善を求める総括所見が出ている。直近の2019年に出た総括所見では、差別の禁止、子どもの意見の尊重、体罰の禁止、家庭環境を奪われた子どもの保護、少年司法の在り方などが勧告されている。
17年から子どもの権利委員会の委員を務めている大谷弁護士は「大きな話として、実際にこの条約を日本の中でどのように注視させて、社会の中でどのように実施していくのかという、大本的な話の部分が欠けていたのではないか。こども基本法ができ、こども家庭庁ができた。批准から25年以上がたったまさに今、日本が改めてスタートラインに立ったということだ」と、こども基本法の成立やこども家庭庁の発足に期待を寄せた。
その上で、子どもに関する法令や施策を整える際に、事実やデータに基づくことや、それらの目的が達成されているかを評価するための定期的なモニタリングが実施され、そこに子どもが参加すること、子どもの権利保障のための独立の監視メカニズムの必要性などを指摘。
子どもの参加については「子どもの意見の尊重で最近、委員会で関心があるのは、形だけの参加では意味がなく、意味のある参加を実施しようと思えばメカニズムが必要になるということだ。地方自治体で『こども議会』をつくっても、地域間で格差がないか、本当に全ての子どもがアクセスできているか、結局、参加しやすい子どもだけの声になっていないかということも、委員会は見ている」と明かした。
さらに大谷弁護士は「子どもは単に保護すればいいというわけではなく、発達しつつある能力に応じて権利を行使できるように国や親が責任として支援し、エンパワーしていくことが重要だ」と強調し、あらゆる子どもの政策について、子どもは権利の主体であるという考えに基づく「子どもの権利を基盤とするアプローチ(child rights-based approach)」の考えが貫かれているべきだと指摘した。