こども家庭庁は、いじめ重大事態の調査委員会を自治体が立ち上げる際に、第三者性の確保の観点から助言を行う「いじめ調査アドバイザー」を学識経験者ら専門家8人に委嘱した。小倉将信こども政策担当相は9月5日、同アドバイザーとの意見交換を行い、「いじめ調査アドバイザーからの助言により、各自治体において重大事態調査の早期化や、個々の事案により適切な対応が図られるようになることを期待している」と述べた。
2021年度のいじめ重大事態の件数は705件で過去最高となり、特に小学校で増加するなど深刻な状況が続いている。一方で、いじめ重大事態の調査については、調査委員の第三者性確保の課題などにより、調査の着手が遅れるなどの課題が指摘されている。
こうした状況を受け、こども家庭庁では学識経験者などを「いじめ調査アドバイザー」に任命し、いじめ防止対策推進法に基づく重大事態調査や再調査について、地方自治体などからの要請に応じ、第三者性の確保の観点から中立で公平性のある調査方法の実施や、調査委員の人選などに助言を行うこととした。
いじめ調査アドバイザーを委嘱されたのは、石川悦子こども教育宝仙大学教授、石隈利紀東京成徳大学教授、伊藤美奈子奈良女子大学教授、栗山博史弁護士、中田雅章日本社会福祉士会副会長、森本周子弁護士、八並光俊東京理科大学教授、渡辺弘司日本医師会常任理事。
この日の意見交換会で、中田副会長は「最初の第三者委員会で第三者性の確保が十分ではなく、結局、再調査に持ち込まれるケースが増えてきている」と指摘。「いじめが起きてから何年もたってから再調査するとタイムラグが生じ、ますます親族の方との信頼関係が失われる。こうした事態を防げるよう、アドバイザーとして取り組んでいきたい」と決意を述べた。
石川教授は「いじめ調査では、報告書をつくり、最後にその学校に対して提言を行う。しかし、その学校が提言を受けて、その後どうなったのかのフォローアップがほとんどできていなかった。提言がその学校にどのように根付き、どう変わっていったのかを見ていく役目も、アドバイザーが担えたらいいのではないか」と提案した。
また、森本弁護士は「調査を行うとき、子どもに対する負担が非常に大きくなる。被害者の子どもはもちろんのこと、例えば自死案件の場合、残された子どもたちが精神的な傷を負っている中で聞き取りなどに協力してもらうことになる。子どもたちへの配慮や、子どもの権利をどう保障していくかという視点も重要ではないか」と訴えた。
こうした意見を受け、小倉担当相は「こども家庭庁として本当に重要視していかなければいけないことの一つが、いじめ防止対策だと思っている。今回、初めていじめ調査アドバイザーを委嘱したが、私としては最初からここからここまでがアドバイザーの仕事だと決めるのではなく、皆さんが活動していく中で、どうやったらアドバイザーが有効に機能するのかを探っていっていただきたいと思っている」と述べた。