いじめ防止の関係省庁会議を学校で開催 道徳の授業を視察

いじめ防止の関係省庁会議を学校で開催 道徳の授業を視察
生徒会メンバーによる発表に耳を傾ける永岡文科相と小倉こども担当相
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 いじめの重大事態が700件を超えたことなどを受けて設置された、政府の「いじめ防止対策に関する関係省庁連絡会議」は9月11日、今年度の初会合を東京都文京区立茗台中学校(西貝裕武校長、生徒312人)で開いた。永岡桂子文科相と小倉将信こども政策担当相も出席し、同中の「道徳」の授業の視察や生徒会の生徒とのいじめ対策に関する意見交換を行った。

 政府の会議が学校を会場に開かれることは珍しく、いじめ防止に関する現場の対策やこどもからの意見を直接見聞きする試みとして行われた。会議の開催にあたり永岡文科相は「いじめが起きてから対応するだけではなく、未然防止の観点から、全ての児童生徒がいじめをしない態度や力を身に付けるような働き掛けを、生徒指導はもとより、道徳や特別活動などを通じて継続して行うことが重要だと考えている」とあいさつし、教科化された「道徳」に対する期待を述べた。

 初会合ではまず、各省庁からいじめ防止対策の取り組みを報告。文科省では来年度予算の概算要求で1人1台端末を活用し、児童生徒の個々の心理状態をアプリなどで定期的に把握する「心の健康観察」の導入推進やいじめ重大事態調査の運用改善に向けた調査研究などを新たに打ち出したほか、スクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)の重点配置校数の増加、重点配置校での配置時間の拡充などに乗り出す。こども家庭庁では、自治体の首長部局からのアプローチによるいじめ解消の仕組みづくりに向けたモデルケースを全国8自治体で構築。重大事態の調査に関して、自治体や学校設置者からの要請を受けて第三者性の確保の観点から助言する「いじめ調査アドバイザー」の事業などに取り組む。

 各省庁からの報告の後、永岡文科相や小倉こども担当相らは2年生の教室に移動し、そこで行われている「道徳」の授業を視察。クラスの中で同調圧力を感じながらも公正な態度を心掛けようとする中学生を描いた教科書の題材を基に、登場人物の心情の変化に着目しながら、自分の考えを話し合う様子に耳を傾けた。

茗台中2年生に行われた、いじめについて考える「道徳」の授業
茗台中2年生に行われた、いじめについて考える「道徳」の授業

 授業後には、同中生徒会から3人のメンバーが出席し、活発なあいさつ運動や匿名でも投稿できる目安箱「メペボックス」などのいじめ防止に関する取り組みを発表。「メペボックス」について生徒は「今までネガティブな意見しか入ることがなかったが、生徒会では『〇〇さんからこんなことをしてもらえて助かった』など、ポジティブな声も集めて、より学校生活が明るくできればと思っている」と、新たな活用アイデアを紹介した。

 発表を受けて永岡文科相が「いじめが起きづらい学校にしていくことに関して、これからどうしていこうと考えているのか教えてほしい」と尋ねると、別の生徒は「いじめを減らすためには、相手の悪いところに目を向けるのではなく、相手のいいところや『ありがとう』を言葉で伝えることが大切だと思っている。中学生だとそうした気持ちを口にするのは恥ずかしいけれど、だからこそ生徒会が率先して伝えていきたい」と答えた。

 また、小倉こども担当相からの「皆さんがいじめを受けた場合、いじめを見て何とか対応したいという悩みを抱えたときに、どういった人にその悩みを相談しようとしているのか。どういうやり方だったら、遠慮や心配をせずに悩みを打ち明けられるのか」という質問に対し、さらに別の生徒は「SCの仕組みが学校にあるものの、私自身はそういうところには相談しづらいと感じている。なぜならば、SCは担任の先生などと違って毎日話をするわけではないからで、どちらかと言えば、信頼のおける大人、例えば両親や担任の先生、そういった身近なところに相談できる場があればいいなと思う」と指摘した。

 会議の終了に際して小倉こども担当相は「こどもまんなか社会の実現に向けては、こどもの視点に立って意見を聞き、こどもにとって一番の利益を考えた上で政策を進めることが重要だと考えている。そうした観点で今回のように授業見学や意見発表を通じて、生徒の皆さんからいじめに対する考えや思いを聞けたことは大変有意義だった」と振り返った。

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