1~2歳、2~3歳の子どもで、テレビやDVDなどのメディアの視聴時間が長くなると、発達スコアが低くなることが9月19日、千葉大学と国立成育医療研究センターの研究グループの分析で明らかとなった。メディアの視聴時間が長くなると、1~2歳ではコミュニケーション領域のみが、2~3歳では粗大運動、微細運動、個人-社会の3領域で発達スコアが低くなった。一方で、1~2歳、2~3歳でコミュニケーション領域の発達スコアが高いと、メディア視聴時間が短くなることも分かった。
これまでの研究では、メディア視聴時間が長い子どもは発達が遅くなるといった報告があったが、メディアの視聴時間が長いから発達が遅くなるのか、それとも発達の遅い子どもはメディアの視聴時間が長くなるのか、従来の解析方法では分けて検討することができなかった。
そこで、千葉大学予防医学センターの山本緑助教と国立成育医療研究センターエコチル調査研究部の目澤秀俊チームリーダーらの研究グループは、2011~14年生まれの子どもを対象にした環境省の「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」の参加者のうち、全ての質問票に回答し、自閉スペクトラム症と診断されていない5万7980人のデータから、メディアの視聴時間と保護者が記入できる発達のスクリーニングツールのスコアの相互の影響を、縦断研究で変数間の因果関係を推測するためのモデルである「ランダム切片交差遅延パネルモデル」を用いて分析。日本の子どもの1、2、3歳時点で、発達やメディアの視聴時間の個人差を考慮しても、それぞれに影響があるかを調べた。
その結果、1、2、3歳の各年齢でのメディア視聴時間が長い方が、1年後の発達スコアが低くなることが認められ、その影響の強さは1~2歳では弱~中等度、2~3歳では中等度の影響だった。さらに、メディア視聴時間が長いと、1年後のメディア視聴時間も長くなっていた。
発達スコアの「コミュニケーション」「粗大運動」「微細運動」「問題解決」「個人-社会」の5つの領域に分けて影響を検討すると、メディアの視聴時間が長くなると1~2歳ではコミュニケーション領域のみ、2~3歳では粗大運動、微細運動、個人-社会の3領域で低くなった。
また、1~2歳、2~3歳のいずれも、コミュニケーション領域が高いとメディアの視聴時間が短くなっていた。
この研究の成果は9月18日付で国際的医学雑誌『JAMA pediatrics』に掲載された。