こども誰でも通園制度、月10時間は少ない 検討会が初会合

こども誰でも通園制度、月10時間は少ない 検討会が初会合
こども誰でも通園制度の本格実施に向けたモデル事業の在り方について議論をスタートさせた検討会
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 政府の「こども未来戦略方針」で打ち出された新たな通園給付「こども誰でも通園制度(仮称)」について、こども家庭庁は9月21日、本格実施を見据えた来年度からのモデル事業の実施に関する検討会の初会合を開いた。来年度のモデル事業で1人月10時間を利用の上限にするというこども家庭庁の方針に対し、複数の構成員からはその少なさを疑問視する意見が出た。

 同制度は現行の幼児教育・保育給付に加え、月一定時間の利用可能枠の中で、就労要件を問わずに時間単位で柔軟に利用できる新たな通園給付として創設される予定で、こども家庭庁では今年度から始まっているモデル事業を、2024年度からは制度の本格実施を見据えた形で展開していく方針だ。検討会では24年度からのモデル事業における事業実施上の留意点や施設・事業類型ごとの実施イメージ、同制度の意義などを議論。12月をめどに事業実施の中間方針の取りまとめを行う。座長には秋田喜代美学習院大学文学部教授・東京大学名誉教授が就いた。

 初会合ではまず、こども家庭庁成育局保育政策課から同制度の検討状況が説明され、▽現行の「子どものための教育・保育給付」とは別に、新たな給付を子ども・子育て支援法に位置付け、市町村による認定の仕組みを設ける▽利用対象は0歳6カ月から2歳の未就園児がいる全ての家庭とし、同制度を行う事業者は市町村が指定する▽利用にあたっては利用者と事業実施者との直接契約とする▽利用方法は利用する園や月、曜日、時間などを固定する「定期利用」と、それらを固定せずに柔軟に利用する「自由利用」の2つの形態を事業者が選んだり、組み合わせて実施したりできるようにすることが考えられる▽24年度のモデル事業では補助基準上1人当たり月10時間を上限とすることを検討している――などの方針が示された。

 こうした方針に対して、構成員の志賀口大輔日本保育協会前青年部長・和光会なごみこども園園長は「保育現場ではこども誰でも通園制度の創設で、現行の教育・保育制度が大きく変わってしまうのではないかというような誤解が生じている」と保育現場の懸念を挙げ、「育児に悩みや不安がある家庭と関わるケースなどでは、特定の家庭やこどもに特定の保育者が連続して関わっていくことで効果が高まる。効果的な支援を実現するためにも、専任者を安定して雇用・配置できる仕組みを検討いただきたい。専任者が窓口となり、要支援家庭に市町村や関係機関と積極的な連携が可能になるし、そうしないと解決できない問題もあると思う」と、制度導入にあたっては十分な人的配置が必要との認識を示した。

 また、24年度のモデル事業で1人当たり月10時間を上限とすることについて、今年度にモデル事業を行っている栃木県栃木市の大川秀子市長は「こどもが集団生活に慣れていく点で、果たしてこの10時間がいいのかどうか。これでは目的の解決につながらないのではないか」と苦言を呈した。

 駒崎弘樹全国小規模保育協議会理事・フローレンス会長も「月10時間は少な過ぎる。月20時間以上の利用を可能にしてほしい。われわれのモデル事業で利用しているこどもの平均利用時間は月78時間だ。そのくらいあって初めて、こどもや親に伴走していくことができる。親との信頼関係も作っていける。虐待予防や親への伴走もしっかり考えるのであれば、月20時間以上に引き上げていただきたい」と、利用時間の上限の見直しを求めた。

 初会合を終えてこども家庭庁の担当者は、今回示した補助基準上の上限を1人当たり10時間としたことについて、あくまで来年度のモデル事業でのものであり、本格実施でも同じ上限にするかは決めていないとした上で、「全てのこどもに対する支援として全国的な制度にすることは重い課題として考えないといけない。試行的事業(モデル事業)の補助基準上の上限としているが、将来の制度化を考えると都市部でも確保できるかどうか。この10時間でも正直なところかなり大変だと思う。そういうことも考え合わせた上で、全国の自治体で提供体制を確保することで利用可能枠を設定していきたい」と話した。

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