中間整理案のこどもの貧困関連 当事者が傷つく表現と指摘

中間整理案のこどもの貧困関連 当事者が傷つく表現と指摘
こどもの貧困などの観点から中間整理案を検討したこどもの貧困対策・ひとり親家庭支援部会の第2回会合(YouTubeで取材)
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 こども大綱のベースとなる今後5年程度を見据えたこども施策の基本的な方針と重要事項の中間整理案について、こども家庭審議会のこどもの貧困対策・ひとり親家庭支援部会は9月22日、第2回会合を開き、こどもの貧困やひとり親家庭の観点から検討を行った。中間整理案の文章表現について、当事者の視点で読むと傷つくといった指摘が出た。

 基本政策部会で議論されてきた内容をまとめた中間整理案は、こども家庭審議会の他の部会でも関連項目を中心に検討が行われている。こどもの貧困に関しては、「子ども施策に関する基本的な方針」の一つとして「(4)良好な成育環境を確保し、格差や貧困の解消を図り、全てのこども・若者が幸せな状態で成長できるようにする」と掲げられているほか、「こども施策に関する重要事項」で、各ライフステージにまたがるものとしてこどもの貧困対策が位置付けられている。

 基本的な方針に関して、渡辺由美子構成員(全国子どもの貧困・教育支援団体協議会副代表幹事、キッズドア理事長)が「『良好な成育環境を確保し』とある後に、ぜひ必要な教育環境を全てのこどもに確保するということを入れてほしい。(現在の文案は)成育環境にかなり偏っていると感じる。こどもの成長には成育環境も重要だが教育も非常に重要で、貧困状態にあるこどもはこれらが十分に受けられない状態にあるので、良好な成育環境と必要な教育を全てのこどもに確保するということや、若者が全国どこにいても必要な支援や教育が受けられるというような、教育の担保をすることを、こども大綱で示してほしい」と、教育の保障を基本的な方針に組み込むことを提案。この他にも、別の構成員からこどもの貧困対策は優先順位がより高い政策課題であることをアピールすべきだという主張もあった。

 また、「こども施策に関する重要事項」のこどもの貧困に関する記載で「学ぶ意欲と能力のある全てのこども・若者が、家庭の経済状況にかかわらず、質の高い教育を受け、能力や可能性を最大限に伸ばして、それぞれの夢に挑戦できるようにする」といった文章表現になっていることについて、大石亜希子構成員(千葉大学大学院社会科学研究院教授)は「『学ぶ意欲と能力のある』を読んだときに多少ショックを受けた。意欲や能力で施策対象を選別するようなことは、この部会の考え方や目的ともなじまない。能力を発揮するような機会を封じられるうちに、意欲をなくしたり希望を失ったりする状況に陥るのが貧困なので、この部分は削除してほしい」などと要望。

 同じ個所について山野則子構成員(大阪公立大学現代システム科学研究科教授)も「意欲がないと駄目、夢を持たないと駄目というと、選別になってしまう。選別をしないという視点でもう一回洗い直すと、結構いろいろなところに、子どもたちが読めば傷つく表現があると感じた。無意識に文章がそうなっているかもしれないので、もう一度見直した方がいい。誰でもどの子でも自分であっていい、自分が認められることが勇気づけられるような形にできないか」と、当事者の視点から文章を再度見直すことを求めた。

 この日の会合までに出た意見は整理・集約の後、近く開催されるこども家庭審議会総会で報告される。

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