こども家庭審議会は9月25日、第2回総会を開き、基本政策部会を中心に検討してきた「今後5年程度を見据えたこども施策の基本的な方針と重要事項等~こども大綱の策定に向けて~」の中間整理案について、各部会から寄せられた意見を踏まえ、秋田喜代美会長(学習院大学文学部教授、東京大学名誉教授)に修正を一任することで了承した。中間整理案は取りまとめ後、こども・若者を対象にしたパブリックコメントやヒアリングが行われる。年内には、こども家庭審議会からの答申を基に政府のこども政策推進会議でこども大綱案が了承され、閣議決定される見通し。
中間整理案は「少子化社会対策大綱」や「子供・若者育成支援推進大綱」「子供の貧困対策に関する大綱」を一元化し、さらに今後5年間で必要なこども・若者施策を充実させたこども大綱のベースとなるもので、こども家庭審議会基本政策部会で示された中間整理案について、この日までに関連する各部会での検討・意見提出が求められていた。
中間整理案ではこども大綱が目指す「こどもまんなか社会」を「全てのこども・若者が、日本国憲法、こども基本法及びこどもの権利条約の精神にのっとり、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、ひとしくその権利の擁護が図られ、身体的・精神的・社会的(バイオサイコソーシャル)に将来にわたって幸せな状態(ウェルビーイング)で生活を送ることができる社会」と定義。
こども・若者の権利保障や、政策立案などにおける当事者の意見の反映、ライフステージに応じた切れ目のない支援などを基本的な方針に位置付けている。
その上で、「こどもまんなか社会」の実現に向けた重要事項は、こども・若者の視点に立って分かりやすく示すため「ライフステージに縦断的な重要事項」と「ライフステージ別の重要事項」「子育て当事者への支援に関する重要事項」の3つに整理。特に「ライフステージ別の重要事項」は、「こどもの誕生前から幼児期まで」と「学童期・思春期」「青年期」に分けて、子育てや教育・保育、自己実現のための支援などをまとめている。
この中間整理案は取りまとめ後、こども・若者や子育て当事者へのパブリックコメントやヒアリングが予定されている。中間整理案について、児童養護施設で暮らした経験のあるある田中れいか委員(たすけあい代表理事)は「『こどもの権利条約』の精神に則ると明記されたことと、ヤングケアラーや社会的養護経験者などの声を聞かれにくいこども・若者たちも自らの意見を持ち、表明できる認識を持つことが記載された点(は大きい)。どんな困難な状況に置かれていてもこども・若者一人一人に声があり、気持ちがあるということ、可能性があるということを、『私たち大人が信じているよ』というメッセージを、こども大綱を通して伝えていけたらと思っている」と期待を寄せた。
若者の社会参画に取り組んできた土肥潤也委員(わかもののまち代表理事)は「今回の中間整理案は非常に多くのこども・若者の参画、意見反映があった。これまでこの国でほとんど取り組んでこなかったものが、ここまで進んだことは素晴らしいと思う。一方でつい先日、とある高校の授業を担当させていただいて、こども家庭庁やこども基本法を知っているかと聞いてみたが、100人くらいに聞いて、10人くらいしか手が挙がらなかった。これで本当に『こどもまんなか』と言えるのだろうかという課題も大きく残っている。今一度、認知度をどう広げていくかということを、こども・若者向けのパブリックコメントやヒアリングでさらに広げていけたらと思っている」と、こども・若者へのさらなる周知を呼び掛けた。
この日の総会では関係する各部会から文言の修正や追加などが報告され、取りまとめに向けた具体的な変更は秋田会長に一任された。
また、この他に幼児期までのこどもの育ち部会で検討されてきた「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なヴィジョン(仮称)」の策定に向けた中間整理案についても報告が行われ、了承された。