国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成目標年である2030年までの折り返しを迎えたことを受けて、ユニセフは9月18日、48ある子どもに関連するSDGs指標の3分の2が目標達成に向けたペースから外れているとする報告書を公表した。SDGsの目標達成には、進捗の遅れが見られる国々が、歴史的に前例のないレベルまで進捗(しんちょく)を加速させる必要があると強調している。
報告書「子どものウェルビーイングの推進状況:子どもの権利の視点から捉えるSDGs(原題:Progress on Children’s Well-Being: Centring child rights in the 2030 Agenda)」は、同日から開催された第78回国連総会ハイレベルウィークとSDGsサミットに合わせて発表されたもので、2015年に国連加盟国によって採択されたSDGsにおける子どもに関する各指標についての進捗状況をまとめている。
190カ国以上の20年以上のデータを分析し、各国の現状と今後7年間で目指す姿を比較。現時点で子ども関連の指標の5割を達成し、世界的に最も高い達成度を示しているのは、世界の子どもの人口の6%、11カ国に住む約1億5000万人にすぎず、現状から想定されるペースが続いた場合、30年までに達成できるのは、世界の子どもの人口の25%を占める60カ国にとどまり、140カ国約19億人の子どもたちが取り残されると警鐘を鳴らしている。
新型コロナウイルス感染症や気候変動、紛争、経済危機などによって、進展が止まったり逆転したりしており、特に新型コロナウイルス感染症は長年積み上げられてきた子どもの予防接種に断絶をもたらしたと指摘。低・中所得国では「学習の貧困」がコロナ禍以前より少なくとも33%増加したと推計した。また、ほとんどの国では初等教育の修了率が向上した一方で、一部の国では未就学率の後退がみられるという。報告書では、暴力からの保護や学び、子どもの貧困などに関する目標の進捗が最も遅れているとしている。
シミュレーションを踏まえ、SDGsの目標を達成するには、現在進捗が遅れている国が急速に取り組みを加速させる必要があるとし、各国政府に対して▽保健、教育、社会的保護などの分野における社会的支出を大幅に増やして、その支出レベルを維持する▽SDGs達成に必要な具体的行動を決定するため、データの収集や共有、活用を促進する関係者間の強力なパートナーシップと協力を促進する▽全ての子どもにとって住みやすい地球にするためのコミットメントを強化する――ことなどを提言している。(藤井孝良)