こども家庭庁で傷害事故の把握を 日本学術会議が見解

こども家庭庁で傷害事故の把握を 日本学術会議が見解
iStock.com/Imgorthand
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 こどもの傷害に対応する国の担当部署を置くべきであるとして、日本学術会議は9月28日、「こどもの傷害を減らすための データ収集および利活用の促進」と題する「見解」を公表した。こどもが重傷に至った事故を把握できる公開データベース(DB)が整備されていないことは危機的状況だとし、こども家庭庁にこどもの事故の全てに関与する部署を設置すべきだと提言している。

 日本学術会議の複数の委員会の合同による「子どもの成育環境分科会」がまとめた「見解」では、こどもの傷害を巡ってこれまでも消費者庁の取り組みや傷害情報の収集活動の開始、いくつかの安全基準の作成などが進んできたが、依然として事故によるこどもの傷害は多発しており、死亡数は減少傾向にあるものの、重傷傷害数に減少傾向はみられないと指摘。

 その一因は、こどもの傷害の全てに対応する国の担当部署がなく、信頼できるオープンデータに基づく科学的アプローチや科学的知見に基づいた効果的な施策を打つことが困難なためであるとし、特に死亡に至らないまでの重傷の事故を把握できる公開データベースが整備されていないことは学術活動を大きく阻害する要因になっており、危機的状況だと強調した。

 その対策として、こども家庭庁の安全対策課に、こどもの事故全般を把握し、各部署に調査の指示や要望、勧告を行う役割を担わせる、監査役のような立場の担当者を置くことを提案。消防庁の救急搬送時の事故状況データや日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度で収集されたデータ、消費者庁・国民生活センターの医療機関ネットワークの傷害データベースなどを全て無料公開し学術活動に使えるようにすること、さまざまな機関から得られたこどもの傷害情報を集約するなどして、分析・評価する作業を国が継続的に行うことや、日常の生活事故の研究機関を設置すべきだとした。その上で、抽象的な表現のガイドラインや指針、通達を改善し、学校現場や家庭で活用しやすいように工夫された伝達を行うべきだとしている。

 また、「見解」では傷害予防活動を推進するために、交通事故と労働災害を除く、全ての年代の全ての傷害を対象とした日常生活事故対策基本法を制定することも求めている。

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