加藤鮎子こども政策担当相は10月3日、就任後の報道各社のグループインタビューに応じ、学校での子どもの権利の教育やその保障について、文科省と緊密に連携していく考えを表明した。加藤担当相は6月に閣議決定した教育振興基本計画の推進にあたって「こども大綱に基づく施策と相互に連携を図り取り組む必要がある」との認識を示し、昨年末に改訂された生徒指導提要なども踏まえて、学校現場で子どもの権利の理解やそれに基づく取り組みが進むことに期待を寄せた。
第2次岸田再改造内閣で初入閣してから3週間がたち、加藤担当相は改めて「私自身、仕事と子育ての両立の大変さは(国会議員の)バッジを付ける前からずっといろいろ経験をしてきた。大変さのレベルが一段上がったところはあるが、多くの共働きの方々も同じく苦労をしていることを想像しながら、みんな頑張っていることを心の支えにしてきた。この立場として、大変重たい責任があると感じているが、できる限り現場との距離感が離れ過ぎないように努めていきたい」と抱負を語った。その上で「子育ての経験を生かして感じることと言えば、ちゃんと聞くことだ。家庭の中でも、こどものことをちゃんと聞くことは大変でもあるが、とても大事なことで、子育て政策や少子化対策を進めていくにあたっても、当事者の方々や当事者の方々を支える方々、こどもも含めて、しっかりと共感の気持ちを持ち、話を聞きながら政策に取り組んでいく」と、こどもや子育て当事者らの話に耳を傾ける重要性を強調した。
学校現場での子どもの権利の普及・啓発について尋ねられると、加藤担当相は6月に閣議決定された教育振興基本計画でも、こども基本法やこども家庭庁設置法で子どもの権利や利益の擁護、意見表明について規定されたことを踏まえた対応が必要であると明記されたことや、子どもの権利の理解促進、人権教育の推進、こどもが安心して学べる環境整備への取り組みなどが盛り込まれたことを紹介。「教育振興基本計画の推進にあたっては、これから閣議決定を目指しているこども大綱に基づくこども施策と相互に連携を図りながら取り組む必要があるとされている。昨年12月に文科省が公表した生徒指導に関する学校教員向けの基本書である『生徒指導提要』において、生徒指導の取り組み上の留意点として、児童生徒の権利の理解が挙げられているとも承知している。現場でもそのように理解を進めていく取り組みが進むようなアクションが着々と進んでいると思う」と学校現場の実践の広がりに期待を寄せた。
さらに「こども家庭審議会においても、こども大綱における中間整理が示されたが、学校教育における子どもの権利に関する理解の促進や、教職員や幼児教育・保育、青少年教育に携わる方々への情報提供、研修などが盛り込まれている。こういったことに取り組みつつ、引き続き文科省と緊密に連携しながら、学校現場での子どもの権利に関する教育やこどもの権利の保障に取り組んでいきたい」と、子どもの権利の教育やこどもに関わる教員をはじめとする職員への子どもの権利の研修などについて、文科省と連携して取り組む考えを表明した。
グループインタビューでの教育と関連する加藤担当相と記者との一問一答は次の通り。
――学校現場における子どもの権利の普及・啓発についての文科省との連携は。
学校現場での子どもの権利に関する教育や子どもの権利の保障は、教育基本法に基づいて今年6月に閣議決定された教育振興基本計画において、さまざまに定められている。
例えば、こども基本法、こども家庭庁設置法が成立し、こどもの権利・利益の擁護および意見表明などが規定されたことを踏まえた対応が必要であるということ、また、児童の権利に関する条約およびこども基本法を踏まえ、子どもの権利等の理解促進や人権教育の推進、こどもが安心して学べる環境整備に取り組むなど、子どもの権利・利益の擁護を図り、その最善の利益を実現できるように取り組んでいく。
また、こどもの意見表明に関する施策として、こどもたちに関わるルール等の制定や見直しの過程にこどもたち自身が関与することは、身近な課題を自分たちで解決する経験となるなど、教育的意義があることから、学校や教育委員会の先導的な取り組み事例について周知するとともに、こどもの主体性を育む取り組みを進めるとしている。
さらに教育振興基本計画の推進にあたっては、これから閣議決定を目指しているこども大綱に基づくこども施策と相互に連携を図りながら取り組む必要があるとされていると承知している。
昨年12月に文科省が公表した生徒指導に関する学校教員向けの基本書である生徒指導提要において、生徒指導の取り組み上の留意点として、児童生徒の権利の理解が挙げられていると承知している。現場でもそのように理解を進めていく取り組みが進むようなアクションが着々と進んでいると思う。
先日のこども家庭審議会総会においても、こども大綱における中間整理が示されたが、学校教育における子どもの権利に関する理解の促進や、教職員や幼児教育・保育、青少年教育に携わる方々への情報提供、研修などが盛り込まれている。こういったことに取り組みつつ、引き続き文科省と緊密に連携しながら、学校現場での子どもの権利に関する教育や子どもの権利の保障に取り組んでいきたいと思っている。
――こどもの自殺対策についての考えは。
2022年の児童生徒の自殺者数が514人と過去最多となったことについては、私としても大変重く受け止めている。このような状況を踏まえ、こども家庭庁はこどもの自殺対策の司令塔として、大臣を議長として文科省、厚労省、警察庁などからなる連絡会議を開催し、6月には自殺リスクの早期発見から的確な対応に至る総合的な対策について、こどもの自殺対策緊急強化プランとして取りまとめた。
このプラン(の柱)については3つあり、自殺リスクの早期発見の観点から1人1台端末を活用した心の健康観察の全国の学校での導入の促進、自殺予防への的確な対応の観点から都道府県に自殺対応チームを設置して、支援者に対する自殺対策のさらなる推進、要因分析の観点からばらばらに散在している情報をしっかり集約していき、横串を刺して多角的に分析するための調査研究に取り組むとともに、こども家庭庁の自殺対策を盛り込んでいる。
24年度に向けて、関係省庁で必要な予算や(こども家庭庁の自殺対策室に専任の職員を配置する)機構・定員要求を行っている。このプランを取りまとめた時点では小倉将信前大臣だったが、私もこの予算でしっかりと機構・定員要求を引き継いでやっていく。
こどもが自ら命を絶つことがない社会に向けて、今申し上げたような取り組みを関係省庁とワンチームになって取り組んでいきたい。
――学童保育(放課後児童クラブ)の待機児童問題解消に向けた取り組みは。
放課後児童クラブについては23年5月1日時点の速報値で、利用している児童数は約145万人で昨年に比べて約5万3000人増加しているが、他方で待機児童も約1万7000人と増加している状況だ。この待機児童の解消は喫緊の課題だと認識している。こうしたことから12月をめどに、こども家庭庁と文科省で放課後児童対策を加速化するための方策をパッケージとして取りまとめていくこととしている。
パッケージの内容はこれから両省庁で詰めていくものになるが、余裕教室の利用に加えて、例えば、特別教室などを一時的に利用することも検討の一つだ。理科室や家庭科室といった下校後に空いている教室で、午前中は使っているけれど午後は空いているときに、放課後児童クラブとして使うことができないか。もちろん、簡単なことではなく、6年生は午後も使っていて(下校時刻の早い)低学年とどう調整するかなど、現場ではいろいろ調整が大変だとは思うが、待機児童の解消という目的をしっかり定めて、社会でこどもと子育てを支えていくという理念の下、大人たちもしっかり知恵を絞って、できることを一所懸命やっていく。
関係部署間との調整や確認事項を整理していく必要もあるし、私自身、子供を育てる保護者の立場としては、こどもたちがいかに放課後に安全、安心に暮らせるかということが親御さんの経済活動のみならず、こどもたちにとって大変大事だということを理解しているつもりだ。文科省としっかり連携して議論、検討を進めていきたい。
――日本版DBSの法案提出時期についての考えは。
会見で繰り返し申し上げているように、日本版DBSは大変重要なものだと受け止めている。繰り返しで恐縮だが、スケジュール自体は定まったものがないという言葉通りだ。有識者会議の報告書が先般取りまとめられ、まだそこまで日がたっていないということもあり、報告書を基に与党をはじめさまざまな皆さんからご意見をいただいている段階にある。私自身は取りまとめて意見を伺う側の立場なので、まずは丁寧にご意見をいただきながら、制度設計についての検討をしっかりと進めていき、早急に固めていけるように最大限努力していきたい。
――こども未来戦略方針に掲げられた児童手当の拡充で、高校生の扶養控除の取り扱いについての考えは。
扶養控除については、こども未来戦略方針で児童手当の支給期間の高校生年代までの延長に際して、中学生までの取り扱いとのバランスを踏まえて高校生の扶養控除をどう考えるか整理するとされており、今後、政府全体としてどう考えていくか整理していくものと考えている。