部活動「意欲あり」44%、「負担感」56% 全日教連調査

部活動「意欲あり」44%、「負担感」56% 全日教連調査
iStock.com/west
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 全日本教職員連盟(全日教連)は10月16日、教職員の勤務環境に関する実態と意識を調べた結果報告を公表した。それによると、平日に勤務時間外に学校で仕事をした時間が月40時間を超えると答えた教員は77.6%、このうち過労死ラインとされる月80時間を超えると答えた教員は18.8%となり、教員の長時間勤務が続いている実態が改めて報告された。また、小中学校で部活動を担当している教員に意欲を聞いたところ、熱意を持って取り組んでいる割合は44.3%だったのに対し、負担を感じている割合は55.7%を占めた。また、教員の病気休職者が過去最多となる中、精神的に負担を感じている対象を聞いたところ、保護者対応が55.0%でトップとなり、過半数の教員が保護者対応に精神的な負担を感じていることが明らかになった。

 調査は今年6月30日から8月31日にかけ、全日教連の組合員にインターネットによる個人アンケート方式で依頼したところ、7242人から回答があった。回答者の校種別内訳は、幼稚園0.1%、小学校67.2%、中学校31.3%、高校0.3%、特別支援学校0.4%など。

 結果報告によると、今年4月から夏季休業日までの平日の勤務時間外に学校で仕事をした時間は、1日平均で▽2時間未満(文科省指針の時間外在校等時間が月45時間以下に相当) 22.4%▽2時間~4時間未満(同じく月45~80時間) 58.8%▽4時間以上(同じく月80時間以上) 18.8%--だった。全日教連では、文科省が時間外在校等時間の指針としている月45時間を超える時間外勤務を行っている教員が77.6%に上っていることについて、「依然、長時間勤務が解消されたとはとても言えない現状」とみるとともに、過労死ラインとされる月80時間以上も勤務している教員が18.8%を占めることには「大変憂慮すべき事態」と指摘している。

 今回の調査では、部活動に対する教員の意識も聞いた。回答者のうち小学校では24% 、中学校では99%の教員が部活動を担当しているとの答えており、それらの教員に部活動に対する意欲を聞いたところ、「子供の心身の成長のため取り組んでいる」(33.6%)、「大いにやりがいをもって取り組んでいる」(10.7%)と、熱意をもって取り組んでいる割合は44.3%だった。これに対して、「未経験の部活動のため意欲が低い」(12.5%)、「育児による家庭の事情から意欲が低い」(9.5%)、「自身の体調不安から意欲が低い」(6.7%)、「希望の部活動ではないため意欲が低い」(4.5%)、「介護による家庭の事情から意欲が低い」(2.8%)と意欲が低いと回答した割合は36.0%となり、これに「可もなく不可もなく」(19.7%)を加えると、部活動を負担に感じている教員は55.7%を占めた。

部活動に対する教員の意識

 また、部活動が原因で退職を検討したことがあるかを聞いたところ、「頻繁にある」(4.9%)、「多少ある」(18.9%)、「あまりない」(25.5%)、「全くない」(50.7%)となり、「頻繁にある」と「多少ある」を合わせて23.8%の教員が部活動が原因で退職を検討した経験があることが分かった。

 全日教連では、部活動について、「退職するもしくは退職を検討するほどの時間的・精神的拘束があると感じる教員がいる現状の解消は喫緊の課題」と指摘。▽全ての教職員が本務に専念できるよう、部活動の地域移行を着実に進める▽部活動指導を希望し情熱をもって取り組んでいる教員もいるので、兼職兼業発令のための体制整備も併せて求めていく必要がある--と指摘している。

 今回の調査では、教員が精神的に負担を感じている業務についても、複数回答で回答を求めた。その結果によると、「保護者対応」(55.0%)で1位となり、過半数の教員が保護者との関係で精神的な負担を感じていることが分かった。「生徒指導」(33.1%)、「職場の人間関係」(22.0%)、「特に負担を感じていない」(20.7%)、「学習指導」(14.4%)、「校務分掌」(1.2%)と続いた。「保護者対応」だけでなく、「生徒指導」や「職場の人間関係」を含め、教員にとっては対人関係が精神的な負担になっている実情が読み取れる。

 さらに、保護者との人間関係を聞いたところ、「尊敬の念を持って接してもらっている」(4.9%)、「おおむね良好である」(58.8%)と肯定的な答えが63.7%を占めた一方で、「時折対応に悩むことがある」(32.3%)、「過度な要求や理不尽な対応をされる」(3.4%)と保護者との関係に悩んでいる教員が3分の1を超えていることも分かった。全日教連では、「保護者対応や生徒指導については教師が一人で抱え込むことをせず、学校組織として対応できるよう教育委員会における支援体制の構築が早期に求められる」と分析している。

 文科省によると、2022年10月1日時点で、全日教連には教職員1万7078人が加入しており、そのうち教員は1万4656人となっている。教員全体(83万5998人)に対する加入率は1.8%。新採用教職員の加入率は1.4%。

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