地域限定保育士制度の全国展開や、保育教諭の特例措置の期限到来を受けた改正などについて検討するため、こども家庭庁は10月19日、第1回「保育士資格等に関する専門委員会」を開催した。地域限定保育士制度の全国展開については、各委員から「全国的な保育士不足の現状を考えても全国制度化は賛成」との声が上がった。一方で、「保育の質を担保するためにも、試験の均一化を図る必要がある」との意見も相次いだ。
同委員会は保育士資格等に関わる制度改正などを検討するため、こども家庭審議会の「幼児期までのこどもの育ち部会」の下に設置された。委員長には鈴木みゆき委員(國學院大學人間開発学部教授)が選出された。
地域限定保育士制度は、保育士不足解消に向け、都道府県が保育士試験を年間2回行うことを促すため、2回目の保育士試験の合格者に3年間は当該区域内のみで保育士として通用する資格を付与するもの。3年経過後は、保育士として地域を限定せずに働くことが可能となる。
これまでは神奈川県や大阪府など国家戦略特区に限定して実施されてきたが、保育士の就業地域限定や保育士の質の面で弊害は特段確認されておらず、保育士不足が全国的な課題となっていることから、全国制度化する方向で検討が進められている。
北野久美委員(全国保育士会副会長)は「保育士が確保できないために、利用人数を制限せざるを得ない状況があるため、全国制度化することには賛成」とした上で、「地域限定保育士試験を実施する都道府県により、試験の難易度が変化してしまうことを想定した場合、合格が比較的容易な地域に人材が集中する可能性もある。質の高い保育の提供のためにも、試験の均一化を図る必要がある」と意見を述べた。
また、事務局から全国の自治体では現状、地域限定保育士制度の実施について消極的との報告を受け、井上眞理子委員(洗足こども短期大学教授)は「各自治体が消極的になっている理由を調査すべきではないか」と指摘した。
続いて、保育教諭の特例措置の期限到来を受けた改正について、委員らが意見を交わした。幼保連携型認定こども園で勤務する保育教諭等は、幼稚園教諭免許状と保育士資格の併有が必要だが、いずれか一方のみで保育教諭等となることができる特例措置が設けられている。2022年度時点で、幼保連携型認定こども園で働いている職員で、免許・資格を併有していない者は8%おり、特例措置は24度末で期限を迎えるため、その後の取り扱いについて検討された。
東口房正委員(全国認定こども園協会副代表理事)は「いくら募集しても人が集まらない現状がある中で、どちらか一方の免許保有者に辞めてもらうわけにはいかない。前回の延長時と同様に、5年程度の延長は必要ではないか」と述べた。
山縣文治委員(関西大学人間健康学部教授)も「この特例措置において子どもたちに特に悪い影響はなかったと感じている」と特例措置の延長に賛成の意思を示し、「今後、幼稚園教諭として採用される人はどんどん減っていくだろう。そろそろ保育教諭養成課程を本格的に考えていくべきではないか」と意見を述べた。