中学校や高校の制服の価格設定の是正を促していた公正取引委員会は10月23日、これまで行ってきた活動の結果、ブレザー1着当たり2000円程度の価格低減効果が認められたとする報告書をまとめた。報告書では学校関係者に対して、制服メーカーや販売店の間での競争が有効に機能するよう、コンペや入札、見積合わせなどの方法で選ぶといった取り組みを進めることで、保護者負担の軽減につながると提言している。
公取委では2017年に、公立中学校の制服取引で独占禁止法上問題となる恐れのある慣行が行われているかを調査し、▽コンペ、入札、見積り合わせといった方法で制服メーカーや指定販売店などを選ぶこと▽学校が指定販売店を案内している場合は、指定販売店を増やすこと▽学校が販売店に対し販売価格を抑制するよう依頼する場合には、販売店が共同して販売価格の決定を行うといった独占禁止法違反行為を誘発しない方法で行われること――などを求める報告書を公表。その後、20年には愛知県豊田市内にある県立高校の制服を販売する業者に対し、独禁法に基づく排除措置命令を出している。
これらの学校制服に関する取り組みの中長期的な成果を検証するため、公取委では、22年12月に全国の公立中学校1200校、公立高校750校を無作為抽出し、学校の取り組み状況や制服の価格状況の推移を調べた。
その結果、回答のあった中学校933校、高校601校のデータからは、17年の報告書で示された制服メーカーや販売店に関連した提言に対応した学校は年々増加していることが分かった。
また、制服の価格は全体的に上昇傾向にあったが、それらを加味しても、17年に出した報告書が制服価格の相対的な下落に結び付いていると考えられるとし、その価格下落率はブレザー(上下)1着当たり約2000円程度の価格下落額に相当すると試算。提言の内容や指定販売店の価格カルテルの誘発を防ぐ取り組みを学校が行っていくことで、保護者の負担軽減につながると呼び掛けた。
報告書をまとめた経緯について、公取委の担当者は「制服は公取委として事後検証をすべき候補の一つに挙がっていた。それぞれの活動を評価するデータも出そろったため、今回分析を行った。制服は物価上昇で高くなっており、消費財の典型例でもあるし、選択の余地があまりない。その意味でも国民に提示する意義がある」と話している。