こども誰でも通園制度のモデル事業 検討会が議論を整理

こども誰でも通園制度のモデル事業 検討会が議論を整理
「現時点での議論の整理」が示された検討会の第3回会合(YouTubeで取材)
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 就労要件などを問わず月一定時間、保育所などに生後6カ月から3歳未満のこどもを預けられる「こども誰でも通園制度」のモデル事業の在り方を話し合ってきたこども家庭庁の検討会は11月8日、第3回会合を開き、年内の中間まとめに向けて「現時点での議論の整理」について協議した。制度の目的について、保護者のために「預かる」サービスではなく、こどもの成長の観点から、こどもの育ちを支えることにあることを明確にした。一方、本格実施を見据えたモデル事業の検討課題として、既存の一時預かり事業との関係性などを挙げた。

 こども誰でも通園制度は11月2日に閣議決定された総合経済対策で、本格実施を見据えたモデル事業を2023年度中に前倒しにして始められるように支援することが打ち出されている。このモデル事業の実施にあたって、検討会では12月の次回会合で中間まとめを行う予定で、この日の会合で示された「現時点での議論の整理」はそのベースとなる。

 「現時点での議論の整理」では、この制度の意義として、既存の一時預かり事業と異なり、さまざまな事情で保護者がこどもを預かるサービスではなく、こどもが家庭とは異なる環境で、保護者意外の大人や同じ年頃のこどもと触れ合いながら成長するといった、こどもの育ちを支援するものであると改めて強調した。

 同制度を前提とした一時預かり事業の運用などについては、モデル事業で検討を深めていくべきだとした。

 その上で、23年度からの試行的事業は実施自治体数を拡充し、人口規模に応じた自治体ごとの補助総額の上限を設け、その中で多くの事業者が実施できるようにすることを掲げ、補助基準上、1人当たり「月10時間」を上限とする当初の方針は堅持した。この「月10時間」を上限とすることを巡っては、これまでの検討会の議論でも構成員から少な過ぎるといった意見が出ていたが、「現時点での議論の整理」ではその根拠として、都市部を含め全国の自治体で提供体制を確保する必要があることや、一時預かり事業の平均的な利用時間よりも相当程度多く利用できることなどを挙げた。

 また、こどもが慣れるまでの間は「親子通園」を積極的に取り入れることを検討することや、こども家庭庁で構築するシステム上での個人情報の取り扱いに関する留意点などにも言及。制度の本格実施に向けて、ハイリスク家庭の利用やきょうだい・多胎児の利用、障害のあるこどもの受け入れ態勢の整備なども、モデル事業を通しての検討課題として整理した。

 この日の会合では、構成員から保育関係者の声や現在実施されているモデル事業の状況などが報告されるとともに、「現時点での議論の整理」の内容や制度の本格実施に向けたさまざまな意見が出た。

 中でもモデル事業の大局的な視点として、倉石哲也副座長(武庫川女子大学心理・社会福祉学部教授)は「保育の多機能化が大きな柱になっているが、保育サービスを作り変えるということだけでなく、私自身は保育を作り変えていくという認識も必要になっているのではないかと考えている。思い切った言い方をすると、これまでの通常型の保育を『全日型保育』と位置付け、一時預かり事業とこども誰でも通園制度は『部分型保育』という位置付けにして、全日型の保育と部分型保育でどのようにこどもの育ちや保護者の育ちの成果があり、課題があるのかをモデル事業を通じて検証していくことが重要になるのではないか。保育そのものを作り変えていく共通認識ができるかどうかがポイントになる」と指摘した。

 12月に行われる次回会合では「現時点での議論の整理」にこれらの意見を反映させた中間まとめ案が示される見込みだが、モデル事業を23年度中に実施できるように支援するとした総合経済対策の方針を踏まえ、スケジュールの面からモデル事業の実施を考えている自治体に対するこども家庭庁の説明には「現時点での議論の整理」が用いられるという。

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