スクールロイヤーへの相談「保護者の苦情」最多 文科省が初調査

スクールロイヤーへの相談「保護者の苦情」最多 文科省が初調査
iStock.com/kuppa_rock
【協賛企画】
広 告

 文科省は11月9日、専ら教育行政に関与する弁護士(以下、スクールロイヤー)への法務相談体制の整備に関する調査(2022年度)の結果を公表した。3回目となる今回の調査では、スクールロイヤーの配置状況に加え、法務相談の内容などを初めて調査。都道府県、政令市、市町村のいずれでも「保護者などからの過剰な苦情や不当な要求」への対応が、7~9割台で最多となった。文科省は同日、都道府県・政令市教委に対して事務連絡を発出し、「法的観点からの助言を得ることも有効」として、域内の市区町村教委も含めた法務相談体制の充実を呼び掛けた。

都道府県・政令市の8割が法務相談体制を整備

 調査結果によれば、スクールロイヤーに相談できる体制があると回答した自治体は、都道府県・政令市ではそれぞれ8割以上と高い一方、中核市を含む市町村では11.3%(194自治体)と低かった。未配置の自治体でも、大半は自治体の顧問弁護士などに相談できる体制があり、市町村でも88.5%がこうした体制を作っていた。

 スクールロイヤーが未配置で、今後の配置も検討していない1428市町村にその理由を尋ねたところ、最も多かったのは「自治体の法務全般に関与する顧問弁護士で十分対応できているため」で70.1%、次いで「予算の確保が難しいため」(42.0%)、「弁護士に相談すべき案件が特にないため」(20.5%)、「相談できる弁護士を確保することが難しいため」(14.4%)、「都道府県が実施・提供している法務相談体制の活用で十分対応できているため」(13.9%)などが挙げられた。

 都道府県教委のうち、スクールロイヤーを配置していないのは▽岩手県▽秋田県▽福島県▽石川県▽山梨県▽奈良県▽島根県▽佐賀県――の8自治体だった。また、都道府県教委が配置するスクールロイヤーを、域内の市区町村でも活用可能としているのは30道府県で、都道府県立学校のみ活用可能としているのは▽山形県▽東京都▽岐阜県▽滋賀県▽和歌山県▽徳島県▽長崎県▽宮崎県▽沖縄県――の9都県だった。

保護者からの過剰な要求「法的観点からの助言も重要」

 スクールロイヤーへの法務相談案件の内容を具体的に見ると、都道府県・政令市・市町村とも「保護者などからの過剰な苦情や不当な要求」「いじめ」への対応が多く、他には「学校事故」「触法・非行・暴行などの問題行動」「教職員の不祥事」への対応が多かった。

 スクールロイヤーを確保する方法は、都道府県・政令市では「都道府県弁護士会に依頼」が5~6割台と最も多く、市町村では「つてで個人に依頼」が42.8%で最も多かった。学校が相談しやすいようにする工夫としては、法務相談体制についての周知や相談手続きの簡素化が多かったが、学校管理職向けの研修や、学校訪問による関係作りを行っている自治体も見られた。

 文科省はこうした結果を踏まえ同日、都道府県・政令市教委に向けて事務連絡を発出。法務相談体制のない自治体に対して積極的な整備を求めたほか、都道府県教委に対し、域内の市区町村教委も相談可能な体制を構築するよう依頼した。

 また、法務相談案件の内容として「保護者などからの過剰な苦情や不当な要求」が特に多かったことを踏まえ、「教師と保護者や地域住民は、それぞれの役割を尊重した上で、信頼に基づいた対等な関係を構築する」「教師が個人として対応するのではなく、学校が組織として対応する」「学校だけでは解決が難しい事案については、教委などの行政の責任において対応することができる体制を構築する」――といった考え方を示し、保護者などの過剰な苦情や不当な要求に対し、法的観点からの助言を得ることも有効だとした。

法務相談体制の充実に向けた文科省の支援

 文科省は20年度から、都道府県・政令市教委の弁護士などへの法務相談経費を支援。また同省に「スクールロイヤー配置アドバイザー」を配置し、各自治体での法務相談体制の構築や、各都道府県弁護士会との連絡調整などについて、アドバイスを行っている(問い合わせ窓口:文科省初等中等教育局初等中等教育企画課地方教育行政係:03-5253-4111=内線4678)。

 法務相談体制の構築に向けた手引きや資料、動画などは同省のウェブサイトで閲覧できる。

広 告
広 告