こども家庭審議会の「こどもの居場所部会」は11月15日、第13回会合を開き、「こどもの居場所づくりに関する指針」の答申案を取りまとめた。こどもや若者が主体的に参加しながら、共に居場所をつくっていくことや、こどもの権利擁護の観点を前面に打ち出した。答申案では学校についてもさまざまに言及され、学校をみんなが安心して学べる場所にする風土づくりに取り組み、放課後を含め、より多くのこどもにとっての居場所としていくことを求めた。
答申案では、居場所を「物理的な『場』だけでなく、遊びや体験活動、オンライン空間といった多様な形態をとり得る」とし、そうした場や対象を居場所と感じるかや、そこに行くかどうか、そこでどう過ごすか、そこをどんな居場所にしていきたいかといったことは、あくまでこどもの主体性を尊重すべきだとした。
また、こどもの居場所の特徴の一つとして、多くのこどもにとって学校が、単に学ぶだけの場ではなく、安全に安心に過ごし、他者と関わりながら育つ大切な居場所となっており、不登校は、学びの機会だけでなく、居場所としての学校の役割が損なわれている状態だと指摘。学校の居場所としての機能を高めていくために「学校をみんなが安心して学べる場所にする風土づくりや、家庭や地域との連携・協働を通じて、放課後を含め、学校がより多くのこどもにとっての居場所となることが求められる」と明記した。
その上で、こどもの居場所づくりを進める際は▽ふやす(多様なこどもの居場所がつくられる)▽つなぐ(こどもが居場所につながる)▽みがく(こどもにとって、より良い居場所となる)▽ふりかえる(こどもの居場所づくりを検証する)――の4つの視点が相互に関連し、循環的に作用するものであるとし、どの視点でも、こどもの声を聴き、こどもの視点に立ってこどもと共に居場所をつくっていくこと、大人がこどもの権利を理解し、こどもの権利が侵害されたときの対応方法などをこども自身が学べるようにすること、官民の連携・協働の重要性を強調した。
指針はおおむね5年をめどに見直しを行っていく。答申案は今後、こども家庭審議会から答申され、これを踏まえて政府は年末までに居場所づくりの指針を閣議決定する。指針に基づき、国はこども家庭庁を中心にこどもの居場所づくりを推進。自治体に対しても、教育部局と福祉部局が連携して居場所づくりを計画的に進めていくよう求めていく。
この日の会合では、何点か答申案の微調整が委員から提案され、その反映は部会長に一任する形で取りまとめられた。取りまとめにあたり、前田正子部会長(甲南大学マネジメント創造学部教授)は、今後自治体でこどもの居場所づくりを進めるポイントとして地域住民の共感や理解をどう得るかを挙げた。「答申はまさにスタートだ。私たちの理想や考えを批判する人も出てくると思うが、皆さんとここで一緒につながって、進めていければと思う」と、委員に対して、実践を通じたこどもの居場所づくりの成果や意義の発信を呼び掛けた。